2020年12月11日にオープンしてから早くも「ミシュランガイド東京2022、2023」と、2年連続で一つ星を獲得した「Restaurant L’ARGENT(レストラン・ラルジャン)」が虎ノ門の霞ダイニングへと移転し、グランドオープンに向けて準備をしています!
「ハイエンドレストラン × サステナブル」をコンセプトに上質な空間でパリと北欧のエッセンスと和の季節感を生かしたモダンフレンチを心ゆくまで堪能できるレストランとして注目を集めているラルジャン。伝統と文化の街「銀座」から、進化と変革と街「虎ノ門」に移転し、最先端の息吹の中にクラシカルなエッセンスを重ね、新たなストーリーを創りだしています!新たな店舗は虎ノ門駅からすぐの霞ビルディングの2F。溜池山王駅・霞が関駅・国会議事堂前駅からも徒歩圏内になります。
階段を上り一歩店内に足を踏み入れると、グレーを基調に、天井や壁に木を使ったシックな空間が広がります。臨場感たっぷりのカウンター18席がメインとなる今回の店舗では、目の前でシェフの調理風景が望める特等席を用意!肩ひじ張らずにシェフやスタッフと会話を楽しむことができます!カウンターの周りを囲むようにレイアウトされたエレガントな4名2テーブルに、4名対応の個室ではムーディな雰囲気が楽しめます。
ラルジャンの「加藤順一」シェフが生み出す料理は、クラシカルなフランス料理の確かな技術をベースにしながらも、北欧料理のシンプルさや、最先端の美食トレンドの流れも絶妙なバランスで取り入れ、盛りつけから味わいまでとても洗練されています!また選りすぐりの食材は全て国産にこだわり、シェフ自ら現地に直接足を運び、顔の見える方からの仕入れにこだわっています!加藤シェフは私たちの住む静岡の浜松からほど近い掛川出身!現在、静岡県では「食材の王国」という場を活かし、魅力あふれるふじのくに「食の都」づくりを実現するため、その推進役となる人材や県産農林水産物等を表彰・認定しているのですが、加藤シェフは積極的に静岡の食材も取り入れていることから「ふじのくに食の都づくり仕事人」として表彰され注目を集めています!
今回はソフトオープン中ということで私たちだけの貸切だったのですが、シャンパーニュを頂きながらカウンターの目の前で調理、盛り付けされるお料理を堪能させていただきました!
「Pierre Paillard ピエール パイヤール レパルセル NV」
力強さとエレガンスさが融合した銘醸地ブジーを代表する人気生産者の逸品!ブジーに所有する22区画のブドウをブレンド。完熟リンゴ、アプリコットなどの果実に、レモンの皮やスパイスのニュアンスがあり、繊細で生き生きとした泡とともに濃密な果実が広がっていきます。フレッシュな酸とミネラルによるクリーンなキレが優れたバランスを保ち、余韻は素晴らしく長く感じられます。骨格と果実がエネルギッシュに表現された、一度飲んだら忘れられない、素晴らしい味わいのシャンパーニュです!
【厳選された食材リスト】
宮城 畠山さんのムール貝、帆立貝
愛媛 縞鯵
北海道 根セロリ
長崎 クエ
愛知 高原コーチン
熊本県 ハーブ&ローズの薔薇
アミューズは三陸・宮城のムール貝やホタテを使ったフィンガーフードをカウンターで盛り付けていきます!こちらは復興支援だけではなく、持続可能をキーワードに、あえて養殖されたものをセレクトしているとのこと!生産者の畠山さんは「森が海を育てる」をコンセプトに、20年以上前から宮城の唐桑の海のすぐ背に広がる森を植林され、豊富に植物プランクトンが流入する海で、サイズ感や旨味共に素晴らしい品質のホタテ貝や牡蠣、ムール貝を養殖されています。
目の前で説明をしながら料理を組み立てていくのでとてもライブ感があります!
そんなムール貝やホタテ貝を白ワインで火入れした後、エスカベッシュのように酢漬けしたものをサクサクのクルスタッドに敷き詰め、焼き茄子のエスプーマでふんわりと包み込み、上にはキャビアと穂紫蘇を添えています。香ばしい焼き茄子の滑らかなエスプーマが口中で広がる中、アクセントに酸を感じることができ、食欲を増進させる秋にも相応しい一皿です!
愛媛の縞鯵は加藤シェフの師匠である吉野建シェフへのオマージュで毎年思考を凝らしてた前菜に!
ぷりっとした縞鯵に優しい香りの梨のゼリーのコンビネーションを柚子の泡で覆い、梨のビネガーとディルのハーブオイルで作ったドレッシングのソースで仕上げます!
こちらの料理は30年前に小田原にあったレストラン「ステラマリス」の人気メニューの一つである「真鯛と洋梨」のオマージュで、フランスや北欧で体験した加藤シェフのフィルターを通して、縞鯵と和梨で新たな一皿となっています。
吉野さんは現在71歳ですが、その年齢を感じさせない勢いで全国各地を飛び回りながら、最前線で料理に向き合い、その模様をフェイスブックでリアルタイムに配信しています。加藤シェフの料理をチェックするため、ラルジャンにも何度か足を運ばれているようですが、吉野さんから「成長したね!美味しかったよ」と言ってもらった時に、ようやく認めてもらえたと加藤シェフが涙したというエピソードも。吉野さんに新店舗に伺ったことを伝えると「流石!頑張っていますね」と加藤シェフにエールを贈られていました!
パンは渋谷区広尾にあるデンマーク人の店主が営む「BRØD(ブロッド) 」の焼きたてカンパーニュを用意。デンマークの製法で育てた自家培養のサワー種でゆっくりと発酵させたカンパーニュ。毎朝、厨房でシャカシャカと音を立て作り上げているフレッシュなバターと、焦がしバターとバターミルクを合わせた濃厚なホイップバターの二種を添えて。新店舗が落ち着き次第、旧店舗で提供していたライ麦のベースにエビスビールやホエイを練り込み蒸してからオーブンで焼き上げる自家製のサワードウブレットも作っていくそうですので乞うご期待!
コース中盤には加藤シェフが藁のスモークを閉じ込めたガラスの容器を目の前まで開けるパフォーマンスを。
そこに出てきたのはなんと大きな北海道の根セロリ!こちらを使った一皿は、加藤シェフがデンマークでホームステイしていた時、数種の根菜を丸ごと藁と一緒に鍋に入れ暖炉の中でゆっくりと火を通した家庭料理を作ってもらい、それを食べた時の強烈な印象が忘れられず、その料理をオマージュして作られています。
まるごと調理された野菜から出る力強さとトーストされた藁の優しい香りが見事に合わさり素晴らしい相乗効果をもたらしてくれます。デンマークの家庭で振舞われた根セロリのローストを竹輪のように串に刺していただきます。
こちらに合わせるのは昆布・鰹・鮪の出汁をベースにサワークリームをアクセントに入れたソース。
串差しの根セロリを和テイストのソースにつけて頂くことで、デンマークと日本の家庭料理をフュージョンさせた独創的な一皿。
加藤シェフは東京、パリ、さらにはコペンハーゲンで、「時代の寵児」と呼ばれる偉大なシェフのもとで料理を追求してきました。彼らと共に「美味しいものの正体」を追い求めるうちに得たものがあると言います。それは、料理の作り手である自分が何を考え、何を発信していくべきなのかという問いかけを続け、皿の上に表現を繰り返すことこそ、今という時代を生きる料理人の本懐ではないかと。 パリにはパリの、コペンハーゲンにはコペンハーゲンの料理がありますが、一人の日本人として「和」を強調することで、日本らしい加藤シェフ独自の世界観を料理で表現しています。
Champagne「ルイナール ブラン ド ブラン ブリュット
(Ruinart Blanc de Blancs Brut)」
世界最古のシャンパーニュ・メゾン「ルイナール」。シャルドネ種の洗練にこだわり、何世紀にも渡り磨き上げられてきた伝統製法により生み出されるシャンパーニュは、繊細で長く続くパールのような泡立ちと、滑らかなバランスの良い味わいを楽しめます。
長崎県から届くクエはあえてフレンチのクラシカルな調理法で提供!クエを帆立のムース、手長海老、セミドライトマトと一緒に網脂で包んでロースト。ハマグリの出汁にサフランのエッセンスをプラスしたソースで頂きます。
弾力があり食べ応えのあるクエは伝統的な調理法によって単体の素材だけでは感じることのできない融合と調和を楽しめる一皿に!肉厚で旨味のあるクエはまるでお肉を味わっているくらいの食べ応えが印象的でした!
今は世界中で様々なスタイルの料理が出てきている中、グローバル化された部分やオリジナリティの追求ばかりがクローズアップされる傾向にあります。もちろん進化を追い求めることは重要なことですが、そこで働く料理人はその店のオリジナル料理を学んだとしても、基本を知らずに表面的な部分だけを見て重要な部分を見落としているのではないかと。そんな想いを伝えていきたいと、加藤シェフの料理には基本に忠実なクラシカルな調理法が取り入れられています。
繊細できめ細やかな身質の愛知の高原コーチンが今回のメイン!愛知県豊田市、愛知と長野と岐阜という丁度三県の県境にて育てられる地鶏を使った一品。高原コーチンは脂乗りが良く、またその黄色い脂は甘みがあり口の中でとろけるクリーミーな仕上がり。この高原コーチンのエキスをたっぷり吸ったスープで根菜類や旬の松茸と一緒に煮込んでポトフ風に仕上げ、トリュフの香りがアクセントになっている優しくも素材の味を活かした一皿です。こちらのスープは料理を作る際に出た肉や野菜の端材を余すことなく使用していてとてもサスティナブルな逸品!
加藤シェフがフランスの星付きレストランで働いていた時、厨房では最高の料理を提供するために食材の本当に良い部分だけを抽出し、削ぎ落した部分はまかないでも使い切れない量になるため、すべて廃棄していたそうです。確かに美味しさを追求した結果、そのようなアプローチも仕方ない事なのかもしれない。ただ、加藤シェフはそのやり方に対して違和感を感じていました。なぜならば、タテルヨシノでの修業時代、師匠の吉野さんからは「食材を絶対に無駄に使うな」とゴミ箱を定期的にチェックされるくらい徹底的にフードロスに対する意識を叩きこまれていたからです。これらの教えがベースとなり今のラルジャンのスタイルが確立しています。
ラルジャンでは加藤シェフの体験、感性、出会いや想いを通じながら、ただ料理が美味しいということだけではなく、フードロス、持続性、国内自給率、復興支援にも繋がるような調理やサービスを心がけ、来店されるお客様の心の片隅にそういった思いが少しでも芽生え、お客様と生産者の橋渡しが出来るよう今回の移転に踏み切りましたが、その核になる考え方は料理人駆け出しの頃に叩きこまれた師匠の吉野さんの考え方が大きく影響していることは間違いありません。
コースの最後は色鮮やかな「ハーブ&ローズ」の薔薇を液体窒素で凍結させ砕き、デセールに纏わせて仕上げるスタイル。降り注がれる薔薇の艶やかな瞬間を目の前で楽しめます!
熊本の「ハーブ&ローズ」の薔薇が育つ土壌には、火山灰が豊富に含まれているという話を聞いた加藤シェフが、薔薇と灰の組み合わせをイメージし考案された一皿。
火山岩に見立てた薔薇のアイスクリーム、竹炭でコーティングしたゴツゴツとした気泡のメレンゲ、火山灰に見立てたバニラパウダーを添えて。器に然り、色味のないモノトーンの色調から、一見無機質なように見えるものの、薔薇の花びらが添えられた瞬間に、加藤シェフが描く熱い想いが添えられたような演出に、思わず笑みが溢れます!加藤シェフは幼少期にマジシャンになりたかったようで、昔から人を驚かせたい、喜ばせるのが好きだったようです。そのような思いをマジシャンとしてではなく、料理人としてお客様が今まで見たことのない、まるでイリュージョンだと感じてもらえるような料理を提供したいと、このような思考を凝らしたプレゼンテーションをしているのではないでしょうか。
珈琲を頂きながら色とりどりのミニャルディーズは一つひとつのクオリティの高さが際立ちます!
藁と根セロリで出たセロリの端材を再利用したマカロン
青森のカシスを使ったグミ
実家の掛川茶を使った生チョコ
静岡のヨコスカ地区のサトウキビを煮詰めたヨコスカシロ(白下糖)を使ったクッキー
静岡のヤブキタの和紅茶 貴婦人を使ったキャラメルミルクティーのムース
特に和紅茶を使った濃厚なチョコムースタルトは、キャラメルでコーティングされ、香り高く滑らかな舌触りでとろける美味しさで最後の最後まで口福を感じられました!
今回頂いたどの料理も、日本の食材をただ使ったフランスや北欧料理というものではなく、繊細な食材の特性を活かし、様々な調理のアプローチで味わいの優しい絶妙なバランスとなっていて、さらには加藤シェフの想いがカウンター越しにダイレクトに伝わってきて、本当に素晴らしい時間を過ごすことができました!
そんなラルジャンは今週からはランチ営業もスタートされるようですが、本格稼働はもう少し先になるとのこと!バータイムも用意されるので、バーテンダーによるカクテルとのペアリングも期待できそうです!カウンター越しに加藤シェフの想いを直接感じることのできる新生ラルジャンの今後の展開が楽しみです!
CHEF PROFILE
加藤順一 / Junichi Kato
1982年、静岡県出身。「辻調理師学校」フランス校を卒業後、「タテル・ヨシノ」(東京)、「オテル・ド・ヨシノ」(和歌山)を経て2009年渡仏。パリの三つ星レストラン「アストランス」勤務時代は肉部門を任される。ここを経験した日本人シェフは加藤を含めまだ3名のみ。2012年、北欧ガストロノミーブーム黎明期だったコペンハーゲンに渡り、二つ星レストラン「AOC」や「レストランマーシャル」で働く。2015年に帰国し、「スブリム」のシェフに就任。以降は、卓越したフランス料理のベースに北欧ならではの斬新な食材使いや美しいプレゼンテーションを駆使する料理で、瞬く間に国内外の食通から注目される存在に。2020年、「L’ARGENT」オープンに伴い、シェフに就任。
L’ARGENT / ラルジャン
住所:〒100-0013 東京都千代田区霞が関3丁目2−6 東京倶楽部ビルディング 2F 霞ダイニング
TEL:03-6268-8427
営業時間:Lunch 12:00-14:30 (L.O.12:30)、Dinner 18:00-22:30 (L.O.19:30)、Bar 18:00-22:30 (L.O.22:00)
定休日:日曜日
https://largent.tokyo/