静岡は焼津、駿河湾の鮮魚を日本国内に留まらず世界へと導く漢、前田尚毅氏率いる老舗鮮魚店「サスエ前田魚店」が提供する鮮魚を求め、故郷である広島から遥々焼津に移り住み「馳走2924」を改め「馳走西健一」として、2022/6/18に焼津にてオープンしたフランス料理店。
コロナ禍での移住開業となるも瞬く間に人気を博し、その勢いは止まらず、フランス発本格レストランガイド 「ゴ・エ・ミヨ/Gault&Millau 2023」では2トックを獲得し、「食べログアワード2024/The Tabelog Award 2024」では、早くもシルバーを獲得。今や半年待ちの予約困難店に成長。
「馳走西健一」
こちらでは、シェフのおまかせコース1本で勝負。オーナーシェフの西健一 / Kenichi Nishiさん(43歳)は、フランスへ渡仏しフランス料理を学んだ経験を持ち、東京のフレンチレストラン「かえりやま」にて修行。その後、地元である広島の和食の名店「馳走卒啄一十」で修行した後に独立し、「馳走」の名を貰い受け、長年研鑽を積んだフレンチと和の技法を使い、広島にて「馳走2924」を開業。広島で「サスエ前田魚店」との取引を担当したことをキッカケに、前田氏との信頼関係が深まっていく。同時に、その日に水揚げされる鮮魚のクオリティーと配送される魚の鮮度の違いを痛感し、広島から此処焼津への移住を決意。「サスエ前田魚店」から僅か5分の場所に、名を改め「馳走西健一」を開業し、駿河湾の鮮魚と地元食材を用いたイノベーティブなフランス料理を提供し現在に至り、静岡を代表する名店「成生」や「温石」、「Simples/シンプルズ」、「FUJI」に続き、その名を轟かせている。
店内は海を感じるコバルトブルーの壁で統一され、中央にはガラス張りの室内庭園が施されており、空間の抜け感と和モダンな雰囲気が心を落ち着かせてくれる造り。
和モダンな空間に広がる一枚板のカウンターが続く席数8席のみの贅沢な空間。
室内庭園には青竹を用いたししおどしの設えで風情を感じます。
お客様より贈られたという「Baccarat/バカラ」の招き猫が玄関先にちょこんと鎮座してお出迎え。
この日は8席全てを貸切、気兼ねすることなく仲間内でのバレンタインディナーは、18:00からの一斉スタート。
カウンターの背景には、塗り壁で世界地図を施されており、アート性があり、デザインとしても面白く、一際目を惹く壁。
乾杯のシャンパーニュは、「クロード・カザル シャペル・デュ・クロ グランクリュ 2017」、「ドラモット ブリュット ブラン ド ブラン 2014」、「テタンジェ ブリュット ミレジメ 2015」、「ローラン ペリエ ミレジメ 2008」、「ニコラ・フィアット キュヴェ225 ブリュット ミレジメ 2004」と、錚々たる顔ぶれの中から酒井セレクトで。
Champagne「テタンジェ ブリュット ミレジメ 2015
/ Taittinger Brut Millésimé」
力強さとミネラル感があり、フローラルとシトラスの香り、果実の芳醇な味わいが広がり、熟成によるふくよかさも備えた調和のとれたシャンパーニュ。
仲良し夫婦4カップルのメンバーで過ごすバレンタインディナー。素敵なお着物姿で艶やかに登場された浜松の呉服屋「京濱」のオーナー森育信さんと昌子さん夫妻。袋井の自家焙煎珈琲豆屋「まめやかふぇ」オーナー濱ちゃんこと濱小路仁徳さんと明美さん夫妻と今年開業20周年を迎えた自家焙煎珈琲豆屋「まめやかふぇ」に乾杯!
濱ちゃんから皆へ、開業20周年を記念して袋井の洋菓子店「菓蔵SUZUKI」にてオーダーメイドされたオリジナルクッキーをいただきました。これからも我が家の必需品となるまめやの珈琲豆を楽しみに、あと10年、20年、30年と頑張っていただきましょう。
袋井の美容室「SWITCH / switch+」オーナー酒井大輔さんと知子ちゃん夫妻とは暫くぶりの再会ディナー。
久しぶりの夜のお出掛けで、大好きな友人たちと過ごす楽しいひととき。ひとりでお利口にお留守番をしてくれている愛犬ショコラに感謝。
おしぼりに刺繍された「24 VINQ」の意味は、フランス語で「24」の数字を「vingt-quatre/ヴァント・キャトル」=「VINQ」といい、「24=西」と西シェフのお名前を指しています。
シェフとアシスタントの息の合ったコンビネーションで繰り広げるライブ感。一皿目は磯の香りと素材そのままの旨みを存分に味わえる一品から。
「蛤」
焼津の蛤のエキスと水だけで仕上げた「蛤のスープ」に、最後にアクセントとして胡麻油を少々垂らし、香ばしさをプラス。旨味を含んだ蛤の身は肉厚で弾力がありプリップリ、濃厚な味わいが広がります。胃に染み渡るスープも余すことなく飲み干していただきます。
「平鯵」
揚げたてをそのままいただく「平鯵の天ぷら」には、お好みで口溶けの良い淡雪塩を添えて。赤蕪の酢漬けがさっぱりとお口直しに。味わいは淡白な平鯵ですが、油との相性は抜群でふっくらとほぐれる身の柔らかさはホクホクで、天ぷらでいただくのが正解!上に纏わせた少量のスパイスが良いアクセントに。
特別にタイミング良く入ったという豆鯵を披露。器にびっしりと美しく整列させた豆鯵は、まるで菊花造りのような大輪の花を咲かせた盛り込みは見事な装い。
一口サイズの小さな豆鯵で頭から骨まで丸ごといただけるため、こちらは素揚げでいただきます。
豆鯵が揚がってくるまでの間に、お次の白ワインを見つめ、じっくりと真剣に選んでくれる酒井セレクト。
目の前で揚げたてをそのまま器に盛り込んでいくため、熱々のまま提供できるのもカウンターならではの醍醐味。西シェフは両ききのようで、拝見していると右も左もいけるようです。身体も身長185cmと大柄で、学生時代スポーツはバレーをされていたとのこと。スポーツ選手の名残を感じさせる肩幅をお持ちです。
「豆鯵」
下処理を施した「豆鯵」をシンプルに素揚げし、こちらもお好みで淡雪塩を添えますが、そのままで十分に楽しめる味わい。頭から丸ごと一口でパクリと頬張れば、凝縮された魚の旨味が広がります。
ある意味、豆な男と称される我が家の主人は何故か一列に整列させては、そのビジュアルを楽しんでいる中、「豆屋だけに豆や」とジョークを飛ばす一声に大爆笑(笑)
「マトロ ムルソー プルミエ・クリュ ブラニー 2017
/MATROT MEURSAULT 1ER CRU BLAGNY」
ムルソーの名門マトロ。ムルソー村とピュリニー・モンラッシェ村の間の好立地に位置するブラニーは、芳醇で妖艶な香りを放ち、繊細さが表現された深い味わいが楽しめます。
「鯵」
今朝水揚げされたばかりの泳がせの「鯵」を厚めにカット、色鮮やかな春菊のソースと酸味のあるソースと合わせて。枝豆と豆の葉、とろっとした食感と甘み優しいペコロスを添えて。鮮度抜群の鯵は、ムッチムチの張りと弾力が楽しめます。
数ある海老の中でも高級とされる「アカザエビ」。体色が鮮やかな橙色で、植物のアカザの若い葉の色を連想させることからアカザエビの名前が付き、戸田地方では「手長えび」とも呼ばれています。水深200mから400mの深海の砂泥底に生息している海老で、漁獲場所も限られていることもあり貴重な代物で、エビの女王との称号も持ち合わせます。
威勢よく暴れようとする活きの良いアカザエビの背に刃を一気に突き刺し、脳天から尾までを真っ二つに開き、丁寧にはらわたを取り除き、貴重な海老味噌はそのままソースに仕立てます。
開いたアカザエビは、炭で軽く炙り、レアな状態で仕上げていきます。
海老味噌を仕立てたソースを纏わせ、マイクロハーブを散りばめて。目の前で捌かれる尊い命をいただけることに感謝して。
「アカザエビ」
12月〜3月ぐらいまでが旬となる「アカザエビ」。レア気味に仕上げた炭火の炙り焼きは香ばしさを纏い、身はねっとりと強い甘みとコクが楽しめます。海老味噌を使ったソースで深み倍増。甘みと酸味のバランスに優れた旨みを凝縮させたミニトマトを添えて。
「ニュダン ピュリニー モンラッシュ レフォラティエール 2015
/Nudant Jean René Puligny Montrachet 1er Cru Les Folatières」
ニュダンはラドワ・セリニィに代々続く造り手で、ピュリニィ・モンラッシェ最高の1級畑と評される区画を持ちます。フレッシュな柑橘系のアロマや、洋梨、ローストしたアーモンドの香り、凛としたミネラルに満ちた味わいが楽しめます。
こちらは後ほど登場するお店のシグネチャーとなるメイン料理「鮮魚のパイ包み」の焼成前のパイ生地にドリュールを刷毛で丁寧に纏わせて仕上げに入る様子。
カウンター内のキッチンで調理する工程を目の当たりにしながら、視覚、嗅覚、聴覚を刺激され、食す前のアプローチから美味しさを募らせます。
それぞれの料理に合わせた器が美しく横一列に並び、順に盛り付ける様子も、学びの一コマ。
友人同士の貸切ということもあり、店内は終始笑顔の絶えない和やかな雰囲気。
「白甘鯛」
「白甘鯛」の鱗をカリッカリに焼き上げる鱗焼きは、白葱と魚介のお出汁を用いたソースでいただきます。トロッと滑らかで風味豊かな菊芋も添えて。白甘鯛は食感もさることながら、箸でサクッと身切れするその身のふっくらとしたふわふわの食感に悶絶!
「パン」
ソースに馴染み、食事の邪魔をしないシンプルな食事パン。フランスから取り寄せる半焼生のパンをリベイクして、外はカリッと中もっちりと仕上げています。数種の海藻を練り込み味わい深くミルキーなフランス産の「Bordier/ボルディエバター海藻」を添えて。この海藻バターがあるとパンがいくらでも食べれてしまいそう。
お次の赤ワインも吟味する酒井セレクト。ナパワインの誘惑に心踊らせて選んだ1本。
シグネチャーとなるスペシャリテの登場。
「鮮魚のパイ包み」
「馳走西健一」のシグネチャー「鮮魚のパイ包み」は、元々、広島時代からの西シェフのスペシャリテでしたが、焼津に移られてからは、此処でしか食べられないパイを目指されるようになったとのこと。鮮魚は、金目鯛や太刀魚など、その日によって内容が異なるものの、その違いを楽しむ常連客の姿は絶えない。
この日は「金目鯛のパイ包み」。香ばしく焼かれたパイ生地は薄くパリッと音を立て重たさを感じさせず、ナイフで開いた時の熱量でどれだけの旨みを閉じ込めているかが伺えます。白身はパイ包みだからこその火入れ具合で、ふわふわのしっとり、鮮魚ならではのむっちりとした弾力がありつつも口中でほのける柔らかさと生シラスとの相性が絶妙で、長時間炒めて甘みを引き出した玉葱も忍ばせてあり、幾重にも美味しさが重なります。パイと白身の間に包んだ大葉のアクセントも良い仕事振りで、バターの美味しさを存分に味わえるクリームのブールブランソースに絡ませていただけば、雄大な駿河湾を感じる口福が押し寄せます。
「セコイア・グロウヴ ナパ・ヴァレー カベルネ・ソーヴィニヨン 2018
/Sequoia Grove NV Cabernet Sauvignon」
セコイア・グロウヴは、1世紀を経たワイナリーと1860年代に造られた田舎風の納屋の頭上にそび立つセコイアの木から命名。ナパ・グリーン・ワイナリーに認定され、伝統を尊重し、未来のために農業を行うというビジョンに基づき、葡萄畑では最小限の介入、セラーでは穏やかなワイン醸造を行い、サスティナブルな農法を守りながら造ったワインは、鮮やかなブラックチェリーとブラックベリーのアロマ、凝縮した味わいが楽しめ、まろやかで滑らかなタンニンと繊細さを感じる1本に。
こちらは鮮魚を取り扱う魚料理が主となるコース料理で構成されていますが、備長炭で仕上げる肉料理も一品。炎が上がり熱気が伝わる場面も。
牛肉のカットの達人として、切るだけで肉が美味しくなるという「沼本カット」の異名技術を持つミートスペシャリスト沼本憲明さんにカットを託した岩国のブランド牛を炭焼きで提供。牛は通常40程度の部位に分けられるのですが、沼本さんの手にかかれば、その数何と120と、およそ3倍もの部位に細分化してカットされるこだわりの「沼本カット」!
肉のポーションはそれぞれにお伺いを立ててくださるので、通常は60g程度ですが、少量に切り分けていただくことも可能。
シンプルで繊細な盛り付けですが、シンプルなほどにその素材の良さが引き立ちます。
「沼本カットの岩国牛」
ミートスペシャリストの「沼本カット」を施した岩国の雌牛で、程良く質の良い脂を持つ赤身肉のモモ肉の一部は、炭焼きした後に牛が食べている藁で燻し香りを纏わせるてお仕上げ。塩漬けの胡椒はお好みで。嫌味の全くないジューシィーな肉汁と旨みが迸り、品質の良さと手入れの良さがが伺える牛。添え野菜は、富士宮産の農家産から仕入れるさつま芋の紅はるかで、いつも食べている紅はるかとは思えないほどの甘さに驚きました。根菜類は沸騰させない程度の湯温でじっくりと茹であげてから仕上げに表面を焼くことで香ばしく仕上げ、中はしっとりとした食感と濃密さを引き出しているとのこと。同じ素材でもプロの手にかかると格段に美味しくなるマジック!
〆の一品料理はリゾット。その上に添える鮮魚黒ムツを串に刺して炭焼きに。
見るからに柔らかそうにぷるんとした弾力が伺えふっくらと仕上がっている様子。
お腹は既に十二分に満腹ですが、魚の焼き上がる香ばしい香りにノックアウトされ、再度食欲を掻き立てられます。
「黒ムツ」
〆は「黒ムツのリゾット」。炭焼きした黒ムツには照り焼きのようなソースを纏わせて、下に添えるは魚介のお出汁の旨みを吸ってプチプチと弾ける食感が楽しめるもち麦と玄米のリゾット。海苔のように香ばしく焼き上げたケールも添えて。
デザートは二品。先ずは静岡の焼津で作られている希少品種のブランド苺「桃薫」を。
「桃薫」
フルーティーな桃やココナッツに似た香り、甘いカラメルのような特徴的な香りの成分が多く含まれ、従来の苺とは違った風味を楽しめるブランド苺の「桃薫」。日本でも生産者は限られており、あまり市場に出回らない希少品種。静岡では唯一焼津で生産されている農家「いちごの松田農園Six Berry Farmers」から。柔らかくジューシィーな果肉の桃薫のシロップがけで、上にはヨーグルトのシャーベットを添えて。
「ピスタチオのソルベ」
口溶け滑らかな濃厚なピスタチオのソルベは、後から後からピスタチオの風味が口中いっぱいに広がり、コーヒーとの相性も良く楽しめます。
「コーヒー」
食後は恒例の撮影会となり、先ずは夫婦揃って艶やかな着物姿でお越しの浜松の呉服屋「京濱」のオーナー森育信さんと昌子さん夫妻をパチリ。
昌子さんはバレンタインディナーに合わせてハートをあしらった帯で、見つめ合うお二人の姿も微笑ましく、後ろ姿も素敵。
西健一シェフを中央に皆で記念撮影。
「24」=「西」
現在予約は早くても半年待ちと、なかなか気軽に利用するには縁遠いお店になってはしまいますが、機会があれば是非とも味わっていただきたい駿河湾の魚料理たち。友人夫妻にお声掛けいただいたおかげで、美味しく楽しい時間を共有することができました。また足を運べることを願っています♪
馳走西健一
住所:静岡県焼津市西小川4-8-9
TEL:054-625-8818
予約受付サイト:OMAKASE
駐車場:店前に有
公式Instagram:https://www.instagram.com/chisou_nishikenichi/