浜松「アートアクアリウムを創造する世界的アーティスト・木村英智との出会い」

いつものように自宅ダイニングで寛いでいると、珍しく夜遅くに一本の電話が。

「頼む!繋がってくれ!」

そんな思いで電話をしてきた相手は、アートアクアリウムアーティストでアートアクアリウムの創始者でもあり、世界中を駆け巡る木村英智(Hidetomo Kimura)さんでした。その時はただ、間違い電話かと思いましたが、あまりに長く鳴り止まないコールに戸惑いながらも出てみたところ

「実は車が動かなくなってしまって…」

と、どうやら車のトラブルでお困りの様子。詳しく話を聞くと、新東名を愛車のフェラーリ456M GTAで移動中、NEOPASA浜松上りのサービスエリアで休憩中、突然車のセキュリティが誤作動を起こし車に閉じ込められてしまったとのこと。なんとか脱出はできたものの、セキュリティが働きエンジンがかからない状態になってしまっていると。それは思いもよらぬ突然のヘルプ要請でした。

症状からすると、エンジントラブル等ではなく、フェラーリの456M GTAのセキュリティのリモコンの電池切れではないかと判断し、サービスエリアのミニストップで探すも単五サイズの「LRV08 12V」の電池など見つかるわけもなく、ほとほと困り果てていらした様子で、画像左の分解したリモコンキーの画像がメッセンジャーで送られてきました。一通り、状況説明のやり取りを終え、私たちは直ぐにネットで販売されている可能性のある電気店を探し、閉店ギリギリに電気店へ到着。型番を伝えると電気店のスタッフがこの電池の在庫を確認してくれて無事に購入することができました。電池画像を送ると、「あぁあ…嬉しい」と安堵された様子。私たちは電池を握りしめ、そのままの足で「NEOPASA浜松上り」へ直行!

以前、木村さんが、マルチェロ・ガンディーニデザインの1997年式V8クアトロポルテのオルタネータのトラブルでお困りの際に、華道家である友人の永井裕心(Yuushin Nagai)くんの紹介でFacebook上で繋がって、部品の手配などでやり取りをさせていただいていたものの、実はお会いするのは初めましての仲。それでも夜遅くに車仲間が困っていると知れば、動かずにはいられない。きっと誰でも同じことをしたでしょう。私たちも幾度となく、車のトラブルでは友人知人に助けられてきましたし、こうしたアクシデントは付き物の車を愛する仲間としては素通りできません。たまたま、車のトラブルが浜松であったこと、たまたま、ここ最近のやりとりで、「静岡にお越しの際は浜松にお立ち寄りください」とメッセージを送っていたこともあり、木村さんの記憶の片隅にあったご縁で、ひょんな形ではありますが、引き寄せが重なりお会いすることが出来た奇跡の夜。

黄色のフェラーリなら直ぐに見つかるだろうとパーキング内を探していると、偶然にも黄色のプリウスが隣に停まったとのことで、それを目印にとメッセージが届いたところ。見つけましたよ!悪目立ちしている車を(笑)夏の夜風にあたり、困り果てていたとは思えないほど爽やかな笑顔で顔合わせした木村さんからの力強いハンドシェイクで歓迎を受けました!

サービスエリアの駐車場でリモコンキーの電池を新品に交換し、祈る思いでセキュリティを解除しセルを回すと

「ヴォ~ン」

フェラーリ12気筒の官能的なサウンドが静まり返ったパーキングエリアに響き渡ります!無事にエンジンがかかったことが確認でき、本当に良かったと木村さんもこの表情!最悪のケースを考え、電話をもらってから、ありとあらゆる車仲間に対処法があるかどうかを連絡をしていたため、私たちもホッと肩を撫で下ろしたのです。

落ち着いた木村さんから御礼にと飲みに誘われたのですが、着の身着のままで、愛犬ショコラをお留守番させて飛び出したこともあり、何処かへ立ち寄るよりかは、我が家へご案内し、お疲れの身体を休めていただくことに。

我が家に戻ると、玄関先で愛犬ショコラが、こんな遅くに何処行ってたのよと言わんばかりの顔でお出迎え。

急なことで、特段おもてなしする様なものはありませんが、折角ですので、シャンパーニュ「Jacques Lassaigne × Kisui Nakazawa」をお試しいただきましょう。お食事を摂る間も無かったとのことでしたので、シャンパーニュに合わせて簡単にできるちゃちゃっと料理を用意。

木村英智(Hidetomo Kimura)プロフィール

1972年、東京に生まれる。“アート” “デザイン” “エンターテインメント”と、自身がライフワークとして追及している「アクアリウム」を融合させる『アートアクアリウム』という分野を発案・確立・創始したアートアクアリウム アーティスト。
環境保全活動も積極的におこなっており、米国フロリダの世界最高レベルの海洋学研究所であるハーバーブランチ海洋学研究所のアクアリウムマテリアルブランド〈ORA〉を日本に展開させ、アクアリウムと自然環境保護を結びつける活動や、オーシャンアスリート達と共に取り組む海の自然を考える活動「One Oceanプロジェクト」、米国デイビッドロックフェラーJrが設立した「Sailorsfor the Sea」のボードメンバーとしての活躍など、様々な活動を盛んに行っている。

アーティストとしての活動の傍ら、車趣味人としての活動も目覚ましく、世界中のフラッグシップイベントへ招待され、そこで自然と培われた自動車界へのパイプが太い。2009年の『東京コンクールデレガンス』を皮切りに、『ジャパン・クラッシック・オートモービル』などの総合プロデューサーを歴任し、世界遺産である元離宮二条城にて『コンコルソデレガンツァ京都』を主催開催し、世界レベルのビンテージカーコンクールイベントを成功させ、アジアで一番の格式コンクールに育てた。現場を指揮れる若手エンスージアストとして、自動車文化を後世に残す役割を期待されている。

2018年3月より日本橋室町の福徳神社を擁する森の地下に、 日本の伝統芸能を中心とした本物の日本文化を気軽に体験できる新感覚の劇場型レストラン&ラウンジ「水戯庵」をオープンさせた。文化メゾンを提唱し、毎日毎晩必ず日本伝統芸能の舞台を観劇できる茶室も備えた施設であり、ジャンルや流派を超えた本家本元本流の文化人達が集まり、次世代への継承をテーマに世界へ向けてリアルジャパンを発信している。

画像:木村英智さんより提供

画像:木村英智さんより提供

画像:木村英智さんより提供

画像:木村英智さんより提供

「水戯庵(SUIGIAN)」

東京は日本橋室町で運営され、日本の文化を通して感じられる大人の遊び心を刺激する隠れ家レストラン&バー「水戯庵(SUIGIAN)」。能や狂言、日本舞踊、神楽、雅楽など流派を超えた伝統芸能が上演され、日本伝統芸能を”宴”として間近に堪能でき、勢溢れる貴重な体験ができるとのこと。連日上演のため、いつ行っても楽しめるという素敵な取り組みをされています。東京へ足を運ぶ際には是非立ち寄りたいものです!

画像:木村英智さんより提供

画像:木村英智さんより提供

画像:木村英智さんより提供

「Honey boy MixNuts × クリームチーズのカナッペ」

何もなくても、突然のおもてなしでも、これさえあれば大丈夫!私の故郷である牧之原市の養蜂家・河村充さんが作る国産蜂蜜「Honey boy(ハニーボーイ)」に香ばしくローストしたミックスナッツを蜂蜜漬けにしたもの「Honey boy MixNuts」。これを胚芽クラッカーにクリームチーズと共に添えれば、ちょっとしたおもてなしのフィンガーフードとして、あっという間に完成です!ちょっとしたアクシデントで精神疲労した脳には、甘い蜂蜜が一番ですね♪

「桃の冷製パスタ」

今が旬の桃。カッペリーニは無かったので、フジッリを使って「桃の冷製パスタ」を。玉葱を磨りおろし、生クリーム、無糖ヨーグルト、エクストラヴァージンオリーブオイル、イタリアはモデナのオーガニックホワイトバルサミコ酢、レモン果汁、蜂蜜、塩胡椒を加え、味を調整してミキシングしたソースにカットした桃を和えて冷やします。茹で上げ、冷水で〆たフジッリと合わせれば完成。暑い夏の夜にシャンパーニュの当てにもなるパスタです!

初めてお会いする木村さんの生い立ちでは「生き物」が身近にあり、幼少期から大の生き物好きであったことをお聞きしました。浪人中の19歳で、縁あった熱帯魚店の事業部長として活躍した後に独立して成功され、20代最後の夏の決意から、「アート」、「デザイン」、「エンターテイメント」と「アクアリウム」を融合させ、幻想的な「アートアクアリウム」という新しい世界を生み出すまでの経緯、商業と文化の街・日本橋の室町から始まり、歴史を持つ古都・京都の室町へと移り住むことになった由縁や関わってきた人々、一方、クラシックカーマニアとしても名を馳せ、国際的なコンクールデレガンスとして登録されている「コンコルソ デレガンツァ京都(CONCORSO D’ELEGANZA KYOTO)」のファウンダーとして活躍されるにあたっての秘話や、現在進行中のプロジェクトなど、夏の短夜を忘れるかの如く、熱い夜を過ごすこととなったこの夜。

「フィン・ユール(Finn Juhl)ニールス・ヴォッダー(Nils Vodder)No.53」

我が家のギャラリーに設置してあるフィン・ユールチェアの中でも、飛騨高山の北欧家具メーカー「Kitani(キタニ)」より迎え入れたNo.53をお気に召されたようで、ドラマのワンシーンかの様に絵になる木村さん。フィン・ユールのNV-No.45と並ぶ名作のNV-No.53。丸みのあるシートから延びるアームには装飾的な溝が彫られており、先端に行くにしたがって少し上向きにカーブを描く彫刻的な作品。暖かみのある煉瓦色のレザーと座面をファブリックに仕上げているコンビカラー。当時の仕様で馬の毛を用いたままの座面に腰を掛ければすっぽりと身体を包み込む優しいライン。そして、その美しいアーム部の先端の造形美は、まさに生き物の如く人を魅了します。

佐鳴湖が見渡せる2階リビングのソファを寝床として用意し、しばしの休眠を。国産のウォールナット無垢材で作り上げたモダン家具ブランド「MASTERWAL(マスターウォール)」のCOMPOSIT SYSTEM SOFAは、空間に応じて自由な組み合わせができる人気のローソファ。クッション構造には、バネを使わない高密度ウレタンの積層構造を採用しており、シンプルな構造ゆえ耐久性が高く、フラットながらしっかりと体を支えてくれ、ソファーベッドとして活用することも可能。ゲストをお招きするのに、ベッドの役割も果たしてくれるコンポジットは優秀です!

朝焼けが美しく映える様子もご覧いただけ、もう一眠りされたとのこと。

夏の日の出は早く、陽が差し込むダイニングに蝉の合唱と共に目覚めた朝。私は一足早く起床し朝食の準備をしていると、「おはようございます!素晴らしい景色ですね!」と起きてこられた木村さん。

朝食を召し上がるかどうか分からなかったので、軽めに、でも具沢山の「味噌汁」を用意。実はここ数ヶ月、我が家の朝食はご飯を抜きで味噌汁のみにしています。それからというもの、身体の調子がすこぶる順調で、16時間ファスティングとまで行かなくても、胃が休まることで負担をかけないせいか、身体も軽く感じるようになりました。

木村さんにもそうお伝えし、食卓を囲むと「やっぱり和食だね」と、しみじみ味噌汁をすする音が響くダイニング。さらに「料理上手だね」とお褒めいただき、会話も弾みます。やはり、美しい物と美味しい物は人を幸せにする力があり、いつも人と人を結ぶ役割を果たしてくれるようです。

食後の一杯は「まめやかふぇ」のアイスブレンドで淹れる「アイスコーヒー」。「木村硝子店」のピッコログラスに記されたKIMURA GLASSの刻印に即座に反応くださり、同じ木村繋がりを気に入ってくれました(笑)

ダイニングのライティングビューローに置いてあった書籍「美しい椅子ー北欧4人の名匠のデザイン」を手に取られたので、「Hans Jørgensen Wegner(ハンス・J・ウェグナー)/The Chair(ザ・チェア)」にも腰掛けていただきました。ウェグナーの名を世に広めた名作で、J.Fケネディ大統領がテレビ討論会で座った椅子で、背中が楽にサポートされ、心地良い座り心地に関心し、また自身が最も美しく見えたことから、「これぞ椅子の中の椅子、特別な椅子」という意味で「The chair!」と呼んだことはあまりにも有名な話です。

午後一の打ち合わせで東京に入られるとのことで、午前は比較的ゆったりとした時間があったようで、ここでも前夜に続き、経験談に基づく木村節を交えながらの歓談タイム。紆余曲折あったとは仰るものの、持っている男・運を掴む人生とはこういうことなんだなと再認識させられた出会いでもありました。

夜と朝の雰囲気が異なるギャラリーを眺められ、富山の陶芸作家作品や「美しい椅子」の造形美に触れていただく一コマ。

「Finn Juhl(フィン・ユール)/Chieftain Chair(チーフテン・チェア)」

1949年に発表されたこちらの椅子はフィン・ユールが自邸の暖炉の前でくつろぐためにデザインされたラウンジチェア。大きく優美で存在感のあるフォルムはチーフテン(酋長:未開の部族の長)の名に相応しいデザインで、デンマークのフレデリック国王が展示会で座った椅子。迷いなく腰掛ける木村さんは、椅子の存在感に負けず劣らずの風格を備えられている様です。

チーフテンチェアは、フィンユール自身が此の様に足を肘掛けに投げ出して座っている写真が残されており、身体をすっぽりと包み込むように腰掛けることができ、機能性と安定性が高いデザインとなります。本当、お似合い。

出立の時。我が家に映えるフェラーリ・イエロー。フェラーリのコーポレートカラーであるイエローは、会社の所在地であるモデナの公式色から来ており、その名も「ジャッロ・モーデナ」。黄色好きの私たちとしては、次の愛車選びでは、このカラーも検討の余地がありそうです。456Mは後期モデルでベースのデザインはピニンファリーナですが、実はモディファイ・デザインを手がけたのが、 当時ピニンファリーナに在籍していた日本人デザイナーの奥山清行(Kiyoyuki Okuyama)さんだというから興味深いです。

一夜明け、リモコンキーも問題なく作動し、無事に見送ることが出来ます。短いひとときではありましたが、とても濃い時間を過ごすことになった日。

この日のご縁を機に、木村さんの京都別邸で木村さんが自ら企画されている次世代のカープロジェクトの内々のお披露目会に招待していただけることになり、また直ぐの再会を約束しました。

世界を跨ぐ木村さんの日本滞在期間は限られているものの、「日本橋と京都を行き来する街道の中継として、我が家をプライベートサロンとしてご活用くださいね」とお伝えすると、「遠慮なくそうさせて頂きます。中継があると助かります!神の引き合わせですね!」とご縁に感謝。次回は京都でお会いしましょう!

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