干物で世界の食をつなぐ!タイの一流シェフ達が焼津の「サスエ前田魚店」で秘伝の技術を学ぶ

A Thai Michelin chef went to Japan’s famous Sasue Maeda fish shop for training on fish preparation!Michelin chefs from all over Japan buy fish from this fish shop.

Maeda’s traditional technique is wonderful. Many chefs have learned the technique of tightening the nerves of the fish to keep it fresh, and sprinkling salt on the fish to release excess water and aggregate the umami.

皆さんはタイ北部の「北方の薔薇」とも称される古都チェンマイにある「ダラデヴィ・チェンマイ Dhara Dhevi Chiang Mai」というホテルをご存じでしょうか?かつてのランナー王朝時代の「都市づくり」をコンセプトに造られており、城壁都市(集落の集合)を見事に再現されているのですが、その広大な敷地の総面積は、何と60エーカー(およそ242,820㎡)という広大な敷地で、分かり易く例えると、およそ東京ドーム5個分もの広さを誇る王宮寺院をイメージした壮大なスケールの高級リゾートホテルでした。しかしながらコロナ過の影響もあり2020年11月に惜しまれつつ幕を閉じてしまいました。とても印象深いホテルで再来したいホテルの一つだったので大変残念でなりません。星野リゾートの星野 佳路さんにぜひ再建していただきたいところです!

さて、5年前にチェンマイのホテルを中心に観光地をいろいろ取材するため現地をリサーチさせていただいたのですがとても気になるレストランの情報が耳に入ってきました。

チェンマイに行かれたことのある方はご存じだと思いますがグルメといえばカオソーイやガイヤーンなどローカルなタイのB級料理が有名で、ほとんどの観光客はこれを目当てに色々なレストランや屋台へ足を運んでいます。そんなチェンマイではまずイメージすることが出来ない、モダンなフュージョン料理を提供しているレストランが王宮エリアから少し離れた郊外にあるというのです。

ほとんど情報のない中で現地ガイドにアテンドしてもらい訪れることができたのが今回ご紹介する「キュイジーヌ・ガーデン Cuisine de Garden Chiangmai」でした。

2011年にこちらのをオープンしたJoseph Leeシェフは日本でいうところのタイ版「料理の鉄人」で注目を集め「Makro HoReCa 2013」で優勝など、数多くのコンクールで受賞した経歴を持たれています。

Joseph Leeシェフは最新の調理法などを積極的に取り入れ、チェンマイで独創的なフュージョン料理を提供してきました。

2011年からチェンマイという地域でありながら、スタイリッシュでモダンな空間を作り上げ、このような先進的な料理を提供していたというのは本当に驚きです。

着実にチェンマイでの実績を積みながら2017年にはバンコクにも姉妹店Cuisine de Garden Bkkをオープンしミシュランガイドにも掲載されています。

昨年末のバンコク取材時にはこちらのレストランにも足を運ばせていただきましたが、モダンの中にも自然を感じられる要素を取り入れた素晴らしい空間で、提供される料理はチェンマイの本店同様に独創的なフュージョン料理で現地の方々を魅了しています。

そんなJoseph Leeシェフは大変勉強熱心な方で料理の調理法だけではなく食材についても多くの知識を深めてきました。チェンマイという山間部では、安定して新鮮な魚を提供することが難しく、もっと鮮度の良い魚を提供できる方法はないかと模索していたところ、ある日本の魚屋にそのヒントがあることを知ります。それが世界が注目する静岡県焼津市の魚屋「サスエ前田魚店」の5代目・前田 尚毅さんが代々培ってきた職人の技術でした。前田さんといえば日本のミシュランクラスのトップシェフから絶大な支持を受ける魚のプロフェッショナル。先日ご紹介した名古屋のReminiscence – レミニセンスのMasaki Kuzuharaシェフもこちらから魚を仕入れられています。

2019年9月に満を持してタイの有名シェフ達と一緒にJoseph Leeシェフは前田さんのもとへ修行をするため4日間来日することになります。彼らの目的の1つとして前田さんにしかできない技である「脱水」を実際に目の前で見ることでした。ただ魚をさばくだけでなく、料理に合わせて旨みを増幅させたり、食感を変える、さらには1週間近く経っても鮮度が落ちない究極の仕立てを中心に処理・保存・調理のプロセスをここで学びそれらの技術や情報を現地の漁師や市場などと共有することで、タイの様々なエリアのレストランに新鮮な魚を提供できる環境を作れるのではないかと彼らは考えました。タイでは基本的に死んでしまっている魚しか市場に流通しておらず、海外から空輸している高級な寿司屋以外では生魚を食べる機会はなかなかありません。寿司もずいぶん定着し生魚を食べる文化も一部に根付きつつありますが、まだまだ生で魚を食べるのに抵抗を感じる方も多いようです。

そのような現地の環境を考慮し、前田さんは祖父から代々伝わるサスエ伝統の「干物」をタイのシェフたちに伝承しようと考えます。この干物の作り方は今まで誰にも教えたことがなく初めてのことだったようです。現地の魚を使って、塩と水さえあれば天日干しで旨みが高められその土地の気候に合わせて完成した干物を使えば、もっと魚料理のバリエーションを増やせるのではないかと考え前田さんは干物作りを教えることにしました。

まずは市場へ足を運び魚の目利きから始まり、干物に使うイワシの頭取りを体験していきます。

前田さんは一年間黙々とイワシを頭取りをされてきた経験を彼らに伝えてその重要性を肌で感じてもらいました。また手開きをすることで包丁では取り切れない小骨を綺麗に取り除くことがと出来るということを丁寧に説明していきます。

そして干物作りで一番重要となる塩水作りを惜しげもなく伝授していきます。最後に醤油を纏わせ胡麻をふりかけ、天日干して完成となります。

実際に干物を作る経験をしたシェフたちは最終日には難易度の高い脱水や神経締めも教わり、苦戦しながらも一生懸命に技術を習得していきました。

4日間の研修はあっという間の時間でしたが、今回の研修を通じて前田さんはタイのシェフたちにどうしても伝えたかったことがありました。

それは本当の美味しさとは技術ではないということ。
人の熱意が無ければ全てが台無しになってしまう。
違う土地でもその想いがあればこの経験で学んだことを通じて、多くの人達を喜ばせることができるはず。
だから最も大切なのは人なのだということを彼らに伝えたかったようです。

参加したシェフたちは前田さんの想いを汲み取り、帰国後はそれぞれのレストランで習得した技術を生かした料理を提供できるように何度も復習し参加したシェフ達で情報を共有しています。
バンコクのミシュランで1つ星を獲得し注目を集める80/20bkkのJoe(Napol Jantraget)シェフも今回の研修に参加されていたのですが日本では醤油で漬ける干物をタイのナンプラーで代用することでオリジナルな干物を作ったり、神経締めや脱水にもチャレンジされ、今まで提供していなかった新しい料理を提供しています。

またチェンマイのBlackitch Artisan KitchenオーナーシェフのBlack Hatenaはバンコクで魚を使った料理イベントを開催し、脱水したヒラメの刺身や、バターフィッシュの干物を混ぜた炊き込みご飯などを提供し現地の方から大きな反響を得ていました。

一方、Cuisine de GardenのJoseph Leeシェフは積極的にコースに魚を取り入れており、タイで水揚げされた厳選した魚を脱水し熟成させることでポテンシャルの高くした刺身を料理の一皿に使用しています。また、持続可能な社会を作り上げたいと食品ロスの問題にも取り組まれており、魚のあらなどはすべて出汁として使用することで廃棄物を少なくする努力をされています。コロナが終息してタイへ自由に渡航できるようになったら彼らのレストランへ足を運んで前田さんから受け継いだ「想い」を現地で体感してきたいと思います。修の写真の多くは一緒に参加したIttichai Benjathanasombatに送って頂きました!ありがとうございます!

サスエ前田魚店
〒425-0036 静岡県焼津市西小川4丁目15-7
TEL 054-626-0003
https://sasue-maeda.com/

Cuisine de Garden
99 Moo 11, Nongkwaii, Hang Dong, Chiang Mai 50230,Thailand
TEL:+66 53 441 599
営業時間:18:00~22:00
定休日:月曜日
https://www.facebook.com/cuisinedegarden

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

先頭に戻る