数あるホテルの中でもワンランク上のサービスを提供するリッツ・カールトンには初代社長の理念が根底にあり、上質なサービスを今でも提供し続けているため、いろいろな企業が参考にしたいと注目を集めている。リッツ・カールトンの初代社長、ホルスト・シュルツィは、リッツ・カールトンの成功の秘密は何かと尋ねると、懐から1枚のカードを取り出して、必ずこう答えたそうだ。
「秘密はこれしかない。このクレド・カードが全てだよ」
<クレド> リッツ・カールトン・ホテルは お客様への心のこもったおもてなしと 快適さを提供することを もっとも大切な使命とこころえています。 私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ そして洗練された雰囲気を 常にお楽しみいただくために 最高のパーソナル・サービスと施設を 提供することをお約束します。 リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、 それは、感覚を満たすここちよさ、 満ち足りた幸福感 そしてお客様が言葉にされない 願望やニーズを先読みしておこたえする サービスの心です。
「たったこれだけのこと?」と思うのだが、これは「ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニー」が誕生した1984年から受け継がれてきたもの。リッツ・カールトンの従業員には、マニュアルに頼らず臨機応変なサービスをする自由が与えられている。それが数々の「リッツ・カールトン・ミスティーク(お客様が感動し、社内でも語り継がれるサービス)」生み出してきたといえる。それも、共通の理念が下地にあるから成り立つのだ。リッツ・カールトンのスタッフは、この「クレド」が書かれた四つ折の小さなラミネートカードを常に携帯している。このカードの表には「クレド」「従業員の約束」「モットー」「サービスの3ステップ」が、裏には「ザ・リッツ・カールトン・ベーシック」といわれる行動指針が書かれている。これを総称して、リッツ・カールトンのスタッフは「ゴールド・スタンダード」と呼んでいる。この中でも「従業員の約束」という部分は非常に大切な部分だと感じる。
<従業員の約束> リッツ・カールトンでは お客様へお約束したサービスを 提供する上で、紳士・淑女こそが もっとも大切な資源です。…(続く)
もちろん、ここでいう「紳士・淑女」とは従業員のこと。企業が従業員を大切に扱ってはじめて、従業員もお客様を大切に扱うことができるはず。逆にいえば、従業員が楽しく、気持ちよく働いていないのに、お客様を楽しく、気持ちよくさせることはできないのだ。ほとんどの経営者はこの点を軽視しすぎかもしれない。従業員も満足させられない経営者がどうしてお客様を満足させることができるのか。リッツ・カールトンでは、従業員がお客様に対してすべきサービスの前提として、企業が従業員に対して保障し、約束する事柄を定めているという。しかも、ある程度の決裁権($2000)も与え、自由度あるサービスができるという。また、従業員の間でも新しく入った人を歓迎したり、記念日を祝ったりするということを推奨し、積極的に行っている。家族や同僚の記念日を祝うことで普段からホスピタリティを発揮していないと、いざお客様を前にした時に何をすべきかがとっさに出てこないという発想からくるのであろう。売り上げをあげることを考える前に、まずは地固めから。自分の、そして企業の器に見合った収入、売り上げしか入らないようになっているものだ。
ザ・リッツ・カールトン東京
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