京都・木村英智カーコレクション「当時のオリジナルを再現した究極の”ディスコ・ヴォランテ”」

京都別邸にて木村英智(Hidetomo Kimura)さんが保有しているカーコレクションのほんの一部を今回も拝見させていただきました。昨年の夏にお邪魔した時はこちらの車庫が隙間無く埋まるほどにありましたが、東京に移動させていることもあり、この日は数台のみ展示されています。

奥には、クラシックカーのレーシングシミュレーターを設置。イタリアの有名なコーチビルダーである「Pininfarina/ピニンファリーナ」と「Zagato/ザガート」がデザインしたシミュレーションマシンで、ヴィンテージな要素が随所に散りばめられており、本格的なクラシックカーのドライビングを体験することができます。クラシックカーのレースは、富裕層のコレクターや自動車愛好家によるものですが、実際のレース場で古いクルマを走らせるには、多少なりともリスクが伴うのが事実。しかし、このクラシックレーシングシミュレーターでは、貴重で高価なビンテージカーをクラッシュさせることもなく、心ゆくまでレースを楽しむことができ、インターネット上で対戦もできるため、世界中のクラシックカーのコレクター達との交流も可能となります。また、自己所有しているクラシックカーの情報をシミュレーターにインストールすることで、自分の車で世界中のレースに参加できるのも魅力の一つです。さらに、シミュレーター上にデジタルツインされたクラシックカーをNFTで価値を担保できるような計画も進んでいます。

「Pininfarina/ピニンファリーナ」

シミュレーションマシンとしては実に精巧な造りで、ステアリングには本物のウッドを用いたクラシックなスタイルとなっており、3つの高精細スクリーン、3つのペダルとスティック、最先端の油圧装置(1950年代から1970年代のあらゆるクラシックカーの動きとGフォースを再現する)、ロジテックのサウンドシステムを搭載。

「Zagato/ザガート」

ザガートはアルファロメオ「TZ3コルサ」、アストン マーティン「DB4 GTザガート・コンティニュエーション」、アストンマーティン「DBS GTザガート」といった豪華なモデルを手掛けられています。どちらのレーシングシミュレーターも、ソフトはスイスの「Racing Unleashed/レーシング・アンリーシュド社」とのコラボにより開発され、デザイン・製作はピニンファリーナとザガートが担当しています。

木村さんから取り扱いの説明を受けて、私たちも体験させていただきましたが、ドライビングシューズを履かないと足を持っていかれそうになるほどにリアリティ溢れる振動と衝撃が伝わり、実体験に近いユニークなマシン。本来は自分のクラシックカーを登録しますが、私たちは登録されている車種の中から選び、コースを選択して、レーシングシミュレーションを楽しむことに。何度、クラッシュしたかは内緒にしておきましょう(笑)

「Disco Volante coupé/ディスコ・ヴォランテ・クーペ」

Disco Volante/ディスコ・ヴォランテは、イタリアのカロッツェリアである「Touring Superleggera/ツーリング・スーパーレッジェーラ」社が、アルファロメオの8Cコンペティツィオーネをベースにカスタマイズしたエクスクルーシブなスポーツカー。この車の名前となる「ディスコ・ヴォランテ」は、1950年代にアルファロメオが製造した伝説的なレーシングカー「アルファロメオ1900C52」の愛称であり、イタリア語で「空飛ぶ円盤」を意味するそのセクシーな丸みを帯びたデザインが目を惹きます。

歴史的背景とコンセプト

ディスコ・ヴォランテは、ツーリング・スーパーレッジェーラが設計・製造した特別な車両で、2013年のジュネーブモーターショーで初めて公開されました。この車は、1950年代のオリジナル「ディスコ・ヴォランテ」のデザインにインスパイアされ、モダンな技術とクラシックなスタイリングを融合させたものです。

ベース車両:アルファロメオ 8C コンペティツィオーネ

ディスコ・ヴォランテのベースとなっているアルファロメオ 8C コンペティツィオーネは、2007年から2009年にかけて限定生産されたアルファロメオの高性能スポーツカーです。この車は、フェラーリ製の4.7リッターV8エンジンを搭載しており、450馬力を発揮します。8C コンペティツィオーネは、その美しいデザインとパフォーマンスで世界的に高い評価を受けました。

カスタマイズとデザイン

「Touring Superleggera/ツーリング・スーパーレッジェーラ」社によるディスコ・ヴォランテは、アルファロメオ8Cのシャシーとパワートレインをそのまま使用しながら、完全に再設計されたボディを持っています。

この新しいボディは、手作業で製作されたアルミニウム製のパネルとカーボンファイバーの要素を組み合わせており、非常に軽量でありながら高い剛性を誇ります。車のデザインは、オリジナルのディスコ・ヴォランテの流れるような曲線美を継承しつつ、現代的なアプローチを加えています。

生産台数と希少性

ディスコ・ヴォランテは、非常に限られた台数のみが生産されており、その希少性から非常に高い価値を持つコレクターズアイテムとなっています。各車両は顧客の希望に応じたカスタマイズが施されるため、完全にユニークな存在となります。

パフォーマンス

ベースとなるアルファロメオ8Cと同じく、4.7リッターのV8エンジンを搭載しており、0-100 km/h加速は約4.2秒、最高速度は約290 km/hに達し、この高性能エンジンと軽量ボディの組み合わせにより、優れた運動性能を発揮。

そのデザイン、美しいクラフトマンシップ、そして圧倒的な希少性により、自動車愛好家やコレクターの間で非常に高い評価を受けています。

木村英智さんと「ラスト・オブ・ライン C52 ヴィンテージエディション」

この特別なディスコ・ヴォランテは、世界で最後に製造された8台目の車両であり、「ラスト・オブ・ライン C52 ヴィンテージエディション」という名称で知られています。この名称は、1950年代のアルファロメオ1900 C52ディスコ・ヴォランテのオリジナルデザインへのオマージュを込めたもので、現代のディスコ・ヴォランテに歴史的なルーツを感じさせる特別仕様。

デザインとディテール

特別仕様として、オリジナルのアルファロメオ1900 C52ディスコ・ヴォランテに見られる特徴的なデザイン要素を再現。ボディカラーも当時のものを採用し、世界に一つだけの木村スペシャル。具体的には、以下のようなディテールが含まれています。

グリルのデザイン

盾の中に十字があしらわれたグリルは、オリジナルのC52から直接インスパイアされたものです。このデザインは、クラシックなレーシングカーのイメージを強調し、現代的な車両にヴィンテージ感を与えています。

クアドリフォリオ(四つ葉のクローバー)

フロントフェンダー上に配置された「クアドリフォリオ」のエンブレムも、アルファロメオのレーシングヘリテージを象徴しています。クアドリフォリオは、アルファロメオが長年にわたりレーシングカーに使用してきた象徴的なマークであり、運の良さと勝利を願う意味が込められています。

特別仕様の背景

木村さんは、美術品や高級車のコレクターとしても知られており、彼のために製造されたこの車は、非常に高いクオリティと独自性を持っています。彼が当時のモデルを求めたスペシャルなカスタマイズにより、この車は他のディスコ・ヴォランテと一線を画す存在となっています。

「ラスト・オブ・ライン C52 ヴィンテージエディション」は、ツーリング・スーパーレッジェーラの職人技術の結晶であり、その希少性から、自動車史における重要な一台となっています。この車両は、オリジナルのディスコ・ヴォランテへの敬意と、現代におけるカスタムカーの可能性を示すものとして高く評価。こちらのエンブレムも52年当時オリジナルをアルファロメオから特別に贈呈され装着している一点物。

このディスコ・ヴォランテの製作に関わった人々のサインがボンネット裏に刻まれており、この一台に込めた熱き想いが記されています。

ディスコ・ヴォランテは、ツーリング・スーパーレッジェーラ社が、創立90周年を記念し、アルファロメオと協議し生まれたクーペ8台、スパイダー7台の世界15台限定のプレミアム生産モデル。

「Disco Volante Spider/ディスコ・ヴォランテ・スパイダー」

木村さんはこの内のオリジナルに捧げるラストオブラインの特別仕様のクーペとスパイダーを両方お持ちで、こちらは、「Museo Storico Alfa Romeo/アルファロメオ博物館」の前にて撮影されたものを頂戴し、掲載許可を頂きました。

木村さん御本人から、この車の製作秘話並びに、細かいディテールで他のディスコ・ヴォランテと違う要素が多々あることを伺えば伺うほど、如何にこの1台が特別仕様であるかが解ります。

「コンコルソデレガンツァ京都/二条城」

尚、このディスコ・ヴォランテが、木村さん主催の「コンコルソデレガンツァ京都」に併せて納車された時に、アルファロメオが木村さんのディスコ・ヴォランテのコンセプトに敬意を表して、イタリア文化遺産であるオリジナルの1952年のディスコ・ヴォランテをアルファロメオ博物館から運び出し、京都まで空輸して並べたと言う物凄い逸話があります。

木村さんの車のナンバーは全て「・614」。自動車趣味の世界で木村さんの「ロイス」と言う愛称を数字にしたもの。いつの頃からか、1950年代のフェラーリでゼッケン「614」を掲げ、当時のミッレミリアに出場したその車を手にすることが夢となり、所有する全ての車のナンバーをその番号で統一されているとのこと。そこには、運の良さと勝利を願う意味が込められています。全ての事柄において、ご縁を大切にされる木村さん。私たちもそのご縁にあやかり、今回の京都旅がありました。また伺える日を楽しみにしております。

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