
今回の冬の箱根旅で訪れた「nol hakone myojindai / ノル箱根明神平」。夕刻、澄み切った冬の空がゆっくりと深いブルーへと移ろうころ、エントランスは、青い空をそっと包み込むような、温もりを感じさせる灯りで、静かで凛とした佇まいを見せています。

森に抱かれるように佇む建物に足を踏み入れると、ロビーラウンジにはやわらかな灯りがともり、昼とはまた違う、落ち着いた表情に。天井から吊るされた照明がつくる陰影と、大きな窓越しに広がるブルースカイの余韻が重なり、まるで一日の終わりを祝福するような、穏やかな時間。

ディナーの間、ショコラはお部屋でお留守番。ワンポを楽しんだあとは、持参した手作りごはんもきちんと食べて、すでに目はとろんと眠たそう。いつも本当にお利口に待っていてくれるから、どんな旅も自然と一緒。そんな存在がそばにいることが、何よりの安心です。

煌々と明かりが灯されるレストラン。高揚感が、静かな期待へと変わるこの瞬間。このあと待つディナータイムへの序章として、これ以上ないほど心地よい黄昏のワンシーンへ。

“心と体をととのえる”をコンセプトに掲げるこのレストランでは、箱根を中心とした地元食材を主役に、その日、その季節ならではの一皿を丁寧に紡いでいきます。

ディナータイムは、17:30〜と19:40〜の2部制です。レストラン入り口で、お部屋番号を伝え、テーブル席へ。

やわらかな灯りに包まれたダイニングは、夜の静けさと溶け合うように、落ち着いた空気が流れています。天井から吊るされたランプのあたたかな光がやさしくテーブルを照らし、しっとりとした大人の時間を演出。今は真冬で静かに佇む庭の枝垂れ桜も、春には窓いっぱいに淡い花を広げるのだろうと想像がふくらみ、季節の移ろいまで感じさせてくれます。

この夜のテーマは、《Rapporti 〜冬至〜》。季節と寄り添い、土地と向き合うという想いが込められた、冬だけの特別なコースが提供されます。

コース料理に合わせて用意された、泡・白・赤の3グラスのペアリングワインをオーダーして、ディナーの始まりです。

イタリアはヴェネト州のスパークリングワインを手に、そっとグラスを重ねて乾杯。

「ALZAIA / アルザイア」
きらめく泡とともに広がる爽やかな香りに、これから始まるディナーへの期待がふわりと高まります。一日の締めくくりに訪れたこの時間が、特別な夜へと切り替わる、そんな高揚感が、静かなダイニングに心地よく満ちていくようです。

「手のひらの小さな収穫体験」
Todays harvested vegetables
コースの始まりは、「手のひらの小さな収穫体験」と名付けられた、施設農園で収穫されたばかりの野菜をはじめ、箱根を中心とした地元野菜たちが並びます。その瑞々しさに、これから続く物語への期待が自然と高まります。

自家製パン「フォカッチャ」
表面はカリッと香ばしく、中はもっちりと弾力のあるフォカッチャ。ハーブの香りとほどよい塩気が料理を引き立てます。

Hors-d’œuvre「冷製鰤大根」
Chilled Yellowtail and Daikon Radish Salad

艶やかな鰤に、クリームを使った大根のブラマンジュにスライスした蕪やラディッシュを添え、瑞々しいハーブを重ねた、まるで一幅の絵のような佇まい。鰤の濃厚な脂の甘みを、爽やかなソースがやさしく引き締め、口に運ぶと驚くほど軽やか。和食の定番でもある「鰤大根」を、洗練された洋の感性で再構築した、清涼感あふれる冷製オードブルです。

まるでストーンのような色合いと質感の器に静かに佇む一皿で、無機質で落ち着いた器が彩りを際立たせ、まるでアートピースのような存在感を放っています。

ペアリングワインの泡のお次は、パスタと魚料理に合わせて白ワインを用意。

「ユニオン サクレ ワインズ ドライ リースリング 2023」
異なる大陸出身の二人が、カリフォルニア・セントラルコーストで出会い、互いを想いながら造るワイン「ユニオン・サクレ」。ドライな味わいに、グレープフルーツや青りんご、百合の花のアロマ。ネクタリンやグアヴァの果実味に、伸びやかな酸とほのかなペトロール香、レモンゼストのような苦味が重なります。清らかで美しく、酸を軸に果実と花の香りが調和する、洗練された一本。グラスの選び方や供される温度にも細やかな配慮が行き届き、ワインはペアリングとは思えないほど惜しみなく注がれます。一杯一杯に向き合う真摯さが伝わり、価格以上に感じるペアリングワインそのものの質の高さと、もてなしの心をしっかりと感じさせてくれます。

Pasta 「蕪ボナーラ」
Turnip Carbonara

淡いクリーム色が印象的で、蕪の味わいがそのまま伝わってくる佇まいのパスタ。イタリアの特にシチリア発祥のS字型をしたショートパスタ、カサレッチェ(Casarecce)に、卵黄とアンチョビのなめらかなソースが優しく絡み、ベーコンの旨みと蕪のとろける甘みが溶け合います。コクがありながら重さはなく、新しいカルボナーラを感じさせる“蕪ボナーラ”です。

自家製パン「米粉パン」
ころんと丸みのある米粉パンは、なめらかな表情とやさしい色合いが印象的。しっとりとした口当たりともっちりした弾力、噛むほどに広がる米粉のほのかな甘みを楽しめます。

Poisson「真鯛 白菜と春菊」
Red Sea Bream with Napa Cabbage and Garland Chrysanthemum
ふっくらと火入れされた真鯛が美しく佇み、淡い色合いの白菜とムール貝がやさしく重なります。下に敷かれた春菊の鮮やかなグリーンのピューレが、全体を引き締める印象的なコントラストに。口に運ぶと、真鯛は驚くほどしっとりと繊細で、蒸し煮にした白菜の甘みとムール貝の旨みが静かに広がります。エシャロットと白ワイン、シラスを使ったソースが奥行きを与え、最後にふわりと立ち上る柚子の香りが、冬の余韻を上品に残す一皿です。

「カンノナウ ディ サルデーニャ リゼルヴァ 2021 セッラ&モスカ」
サルデーニャ島を代表する赤ワイン用ブドウ品種「カンノナウ」。こちらは、サルデーニャ島の名産品でもあるボッタルガに合わせて造られたワイン。濃厚でありながらもしなやかな飲み口で素晴らしい完成度で、ミディアムボディの心地よい果実感が楽しめます。

Viande「近江鴨の炭火焼きと下仁田葱」
Charcoal-grilled Omi duck with Shimonita leeks
ジビエが苦手な方は、追加料金(+3,107yen)で黒毛和牛サーロインの炭火焼きに変更も可能。
見事な火入れで、炭火で香ばしく焼き上げた近江鴨は、中はしっとりと噛むほどにジビエの旨みと香りが口いっぱいに広がります。タイムやローリエが香る玉ねぎの香草パン粉焼きと、甘みを最大限に引き出した下仁田葱が寄り添い、鴨のコクをやさしく受け止める、余韻深くバランスの取れた味わいです。

テンポよく進むコースの中で、ひと皿ごとに心地よい余韻が静かに重なるディナーも終盤を迎えます。

Dessert「クレーム・ダンジュと小田原みかん」
Crème d’Anjou and Odawara Mandarins
甘みと酸味のバランスの良い小田原みかんをキャラメリゼし、滑らかで軽い口当たりのクレーム・ダンジュを、羽衣のようなやわらかな求肥と合わせたやさしいデザート。クランブルの食感が良いアクセントに。

「コーヒー」、Mignardises「ガトーショコラ」
コーヒーの香ばしさに寄り添うガトーショコラの濃厚な味わいが心地よく広がり、静かに満ちていく余韻とともに、幸福感に包まれる美しい締めくくり。

印象的だったのは、どの料理も決して重くならず、食後には不思議と身体が軽く感じられたこと。素材の力を引き出し、余分なものをそぎ落とした味わいは、まさにこの宿が掲げる“心と体をととのえる”という哲学そのもの。静かな箱根の夜。やわらかな照明に包まれたダイニングで過ごす時間は、単なる食事ではなく、旅の記憶に深く刻まれるひとときとなりました。美味しさだけでなく、心までそっと整うディナー体験。「nol hakone myojindai」で過ごす夜に、こんなにも豊かな余韻が待っていることに、あらためて感謝したくなる時間です。

次回予告:ディナー後のお楽しみをお届けします。
nol hakone myojindai / ノル箱根明神平
住所:〒250-0401 神奈川県足柄下郡箱根町宮城野1488-205
TEL:0460-87-2034
https://www.nolhotels.com/hakone-myojindai/
