伊豆最古の湯として知られる修善寺温泉は、温泉情緒と豊かな自然が調和する街並みが魅力。真言宗の開祖である弘法大師・空海が開山した「修禅寺」を中心に広がる温泉街。今回、主人の誕生日旅行のお祝いで再び足を運んでいます。温泉街は、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」にて、「修禅寺」、「竹林の小径」、「指月殿」が、ミシュラン2つ星を獲得しており、前回の「其の壱」では、「修禅寺」や「指月殿」を紹介しましたが、今回は「其の弍」として、温泉街散策のハイライトとなる「独鈷の湯」、「河原湯」、「竹林の小径」、「楓橋」 を順に巡ってまいります。
修善寺温泉の発祥の地と伝わる史跡「独鈷の湯(とっこのゆ)」
今から約1200年前に、桂川で病気の父親を洗う少年の孝行心に感銘を受けた弘法大師・空海が、独鈷杵(仏具)で岩を打ち砕き霊泉を湧き出させ、温泉療法を広めたとされる伝説が残ります。現在は史跡として保存されているため、見学のみ可能となり、温泉街のシンボル的な存在になっています。(※入浴・足湯も不可)
スロープになっているため、ドッグカートでも安心して足を運ぶことが可能です。
桂川のせせらぎと湯けむりに包まれて、
独鈷杵を持つ弘法大師の穏やかな顔立ちを眺めては、温泉の歴史に思いを馳せることができます。
足湯「河原湯(かわらゆ)」
独鈷の湯のすぐ下流に位置する足湯「河原湯」。この付近は、かつて川の河原に湯壺を築き、旅人や村人が気軽に利用した共同浴場がありました。入浴施設は残っていませんが、2010年4月3日にこの足湯をオープンさせ「河原湯」と命名。現在は、当時の名残を伝える石碑や説明板があり、無料で利用できる足湯となっており、温泉街の生活に溶け込んでいた往時を偲ぶことができます。
温かな足湯に浸かり、歩き疲れた足をそっと包み込み、アルカリ性単純温泉の泉質が癒してくれます。
一度に6名ほどが利用できるため、散策途中にサッと楽しめる足湯はぜひ。
桂川に沿って整備された遊歩道は、木々が生い茂り、川面を渡る風が心地よく吹き抜けます。
真夏の陽射しは強くとも、遊歩道の多くは木陰に覆われ、木漏れ日が揺れるたびに、まるで自然の涼しいトンネルのよう。川のせせらぎと蝉の声が重なり合い、夏の暑さを忘れさせてくれる癒しの時間が流れます。
「桂橋(結ばれ橋)」
桂川には、五つの朱色の橋が架かっており、全ての橋を願いをかけながら渡ると恋が実ると言われています。橋にはそれぞれの別名があり、出会って、結ばれ、寄り添って安らぎを感じるというもので、信じるか信じないかはあなた次第ですが、恋愛成就祈願には持ってこいの橋となります。
①渡月橋(とげつばし)/別名:みそめ橋/良縁祈願
②虎渓橋(こけいばし)/別名:あこがれ橋/恋愛成就
③桂橋(かつらばし)/別名:結ばれ橋/子宝祈願
④楓橋(かえでばし)/別名:寄り添い橋/結婚祈願
⑤滝下橋(たきしたばし)/別名:安らぎ橋/夫婦円満
桂川から景色は、まさに修善寺温泉街の象徴で、橋上から風を感じながら、四季折々の彩りが目を楽しませてくれます。
真夏の桂川は、百日紅の花が咲き誇り、川沿いに枝葉を広げる木々が色濃く鮮やかな緑に染まり、陽光を透かして輝きます。その青々とした木々が川面に映り込み、清らかな流れと相まって、爽やかな情景を描き出しています。
修善寺温泉街を代表する散策路「竹林の小径」
こちらは、1994年から3年間の月日を費やして整備された桂川沿いの散策道で、左右に見事な竹林が並びます。
石畳に沿ってまっすぐに伸びる竹林は、まるで時を忘れるような静寂と癒しを与えてくれます。
中央に備わる丸い竹のベンチに腰を下ろして、風に揺れる竹の音を耳を澄まして楽しむのもおすすめ。日中は涼感たっぷりの爽やかな景観になり、夜はライトアップで幻想的な空間が広がり、訪れる時間帯によって異なる魅力を感じられるスポットです。
お昼時を過ぎると、人の流れも増え始めるため、
記念撮影等は、あまり混雑しない午前の早い時間帯の散策がおすすめです。
桂川に架かる五つの橋の四番目、「楓橋」までやってきました。
「楓橋(寄り添い橋)」
竹林の小径を抜けると現れる四つ目の橋「楓橋(寄り添い橋)」。その名の通り、秋には紅葉が川面を彩り一層鮮やかな風景に。
その先を行けば、「ギャラリーしゅぜんじ回廊」が見えてきます。
この時の写真展は、「独鈷の湯 今昔」。修善寺温泉発祥の地である「独鈷の湯」の昔と今を切り取った写真が並び、温泉街の歴史を改めて感じさせてくれる展示です。入場は無料で、気軽に立ち寄れるのも嬉しいところ。散策途中に一息つきながら、修善寺の歴史と文化に触れられる、ちょっとした寄り道スポットです。
展示室の一角には、セピア色で残されている昔の「独鈷の湯」が展示されていました。川の中に素朴な湯壺を築き、湯けむりを立てるその光景は、今の整備された史跡とはまた違い、どこか郷愁を誘う趣きがあります。旅人や地元の人々が湯を囲み、心身を癒した往時の雰囲気が、写真を通して静かに伝わってきました。
「独鈷の湯」から始まり、「竹林の小径」、そして「楓橋」へと続くコースは、修善寺温泉街の歴史と自然美を凝縮した散策ルート。「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で二つ星を獲得した理由も納得できるほど、歩くだけで癒しと感動を与えてくれます。