伊豆長岡・温泉旅館「三養荘-1-」深緑に包まれて迎える記念すべき50歳の誕生日旅行

今年の春、結婚14周年となる象牙婚式を祝って訪れた「伊豆長岡温泉 三養荘」。歴史ある建築と庭園美に心を奪われ、「また季節を変えて訪れたい」と思わせてくれた場所へ、この夏、再び足を運びました。前回の記事はこちらをご覧ください。

今回は、主人の50歳の誕生日を祝う記念旅行。人生の大きな節目となる年を迎え、選んだ旅先は、この特別な宿です。春に見た淡い桜色の庭園は、真夏には深い緑へと姿を変え、同じ場所でありながら、まるで別の世界を訪れたかのような新鮮さ。季節を変えて再訪する贅沢を、到着した瞬間から実感しています。

三養荘に到着すると、出迎えてくれたのは、夏の日差しを受けて一層鮮やかさを増した木々の緑たち。

春に訪れた際には、これから芽吹くであろう若葉を目にした庭園も、夏には濃淡豊かな緑のグラデーションへと成長し、敷地全体を包み込むような深い陰影を描いています。

真夏の日差しは強いはずなのに、不思議と空気は穏やかです。木々が生み出す緑陰が心地よく、離れへ向かう足取りも自然とゆっくりに。長い年月を重ねてきた庭木たちは、この場所の歴史を静かに見守り続けてきた存在。その姿はどこか威厳を感じさせながらも、訪れる人をやさしく迎え入れてくれるようでした。

今回宿泊するのは、前回と同じ、離れの「藤裏葉」。愛犬と滞在できながら、三養荘らしい品格と静寂を兼ね備えた人気の客室。わずか二室だけの離れは、本館や新館とは少し距離を置き、より静かな時間を過ごせる特別な空間です。

深い緑に包まれた庭の奥へと、静かに伸びる石畳のアプローチ。低く抑えられた屋根と土壁に囲まれた渡り廊下は、外の庭と建物の間を緩やかにつなぎ、まるで別世界へと誘われるような趣があります。夏の強い日差しも、ここでは木々の葉がつくる木陰に遮られ、どこか涼やか。蝉の声や葉擦れの音を感じながら、この静かなアプローチを進んでいくと、その先には今回の滞在先「藤裏葉」が。華やかに迎えるのではなく、あえて静けさの中へと導いていく。そんな控えめな佇まいにも、三養荘らしい日本建築の美意識が感じられます。

玄関に足を踏み入れると、そこには一般的な温泉旅館の客室とはひと味違う、どこか由緒ある邸宅を訪れたような趣の土間が広がります。土間から一段上がると、艶やかな木の床が奥へと伸び、障子越しのやわらかな光が静かに差し込む空間。丸太をそのまま活かした柱や、緩やかな曲線を描く壁、竹を編んだ天井など、随所に遊び心のある意匠が施されており、確かな品格が漂います。格式ばりすぎず、それでいて随所に日本建築の美意識が感じられる「藤裏葉」は、足を踏み入れた瞬間から、この先の滞在への期待を静かに高めてくれる空間です。

土間のペットカートは、二室に宿泊する愛犬のために用意されたもの。思わず目を引く“メルセデス・ベンツ製”のカートに乗せて、愛犬と一緒に広大な日本庭園を巡ることが可能です。

離れは、「栄 309」、「華 310」の2室限定で、どちらも愛犬同伴専用の客室です。2室の離れをつなぐ共有スペースとなる居間。ここはもともと茶室として使われていた、藤裏葉の中でも特別な趣を持つ場所です。目の前に広がる庭は、かつて池だったそうで、風情ある水景を望みながら、来賓を迎える場としても使われていたのだとか。茶の湯を通して客人をもてなした往時の面影を残しながら、現在は宿泊者がゆったりと寛ぐ居間へ。

歴史ある空間に身を置き、庭を眺めていると、ここが単なる客室ではなく、長い時を重ねてきた「三養荘」の物語の一部なのだと感じます。

入口右手が華の間、左手が栄の間となります。

今回も滞在するのは、左手奥にある栄の間。予約時に両部屋空いていたため希望しています。

戸を開け一歩踏み入ると、再訪だからこそ感じる安心感と、またこの部屋で過ごせるという小さな喜びがありました。

76㎡を超えるゆとりある空間には、本間をリビングとして、こちらの次の間を寝室として使う、伝統的な和の間取りが設えられています。広々とした畳の間に身を置くと、木の温もりと障子越しに届くやわらかな光が静かに広がり、自然と肩の力が抜けていくよう。足元にやさしい畳の感触も心地よく、靴を脱いで過ごす日本旅館ならではの寛ぎを、ゆったりと味わえます。

広さを感じさせながらも決して大仰ではなく、余白を大切にした空間構成。庭の緑を借景にしながら、光と風、そして静けさまで取り込むような造りに、古き良き日本の住まいの美しさを感じます。

三養荘では、離れの客室でそのままチェックイン。ロビーではなく、自分たちだけの空間で手続きを済ませられる心地よさも、この宿ならではのおもてなし。夕食・朝食の時間などを確認し、愛犬同伴に伴う証明書(狂犬病予防やワクチン接種)等を提出して、サインを済ませて完了です。

窓の向こうには、坪庭いっぱいに広がる深い緑。夏の光を浴びた庭は瑞々しく、客室にいながら自然の中にいるような開放感があります。慌ただしかった日常から、少しずつ心がほどけていく時間。

蝉の声に、風に揺れる木々の葉音、ときおり聞こえる鳥の囀り。夏の庭には、季節の音が満ちています。

ショコラも春の訪れを覚えているのか、自分の場所を理解しているかのように、のんびりとくつろぐ様子が見られます。

夏ならではの音が重なり合いながらも、不思議と静けさを感じる空間。時間を気にせず、予定も立てず、ただ緑を眺めるだけ。そんな「何もしない時間」が、三養荘では一番贅沢なのかもしれません。春に恋をしたこの宿で、今度は夏の美しさに出会いました。季節が変われば、同じ庭も、同じ客室も、まるで違う物語を見せてくれる三養荘。

こちらの滞在では、客室の冷蔵庫もオールインクルーシブとなります。持参したシャンパーニュは、お風呂上がりに取っておき、まずは冷えたビールを取り出し、主人の50歳に乾杯と参りましょう。「お誕生日おめでとう。」私たちだけの声が響く、静かな時間が贅沢に感じます。窓の外には夏の緑を色濃く感じる庭があり、グラスを傾けながら眺める景色は、まるで一枚の日本画のよう。春の記念日に続き、特別な日だからこそ、華やかさではなく、穏やかに過ごす時間を味わえることが何より嬉しく感じられました。

主人の50歳という節目を迎えた三養荘での夏旅は、ここからゆっくりと始まります。

伊豆長岡温泉 三養荘
住所:〒410-2204 静岡県伊豆の国市墹之上270
TEL:055-947-1111
https://www.seibuprince.com/ja/sanyo-so-ryokan

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