伊豆・世界文化遺産「韮山反射路」幕末日本を近代化へ導いた江川英龍の志を訪ねて

伊豆長岡へ向かう途中、伊豆の国市にある世界文化遺産「韮山反射炉」へ立ち寄りました。緑豊かな山々に囲まれ、すぐそばを川が流れる穏やかな風景の中に、ひときわ目を引くレンガ造りの高い塔。現在は静かな観光地として佇むこの場所ですが、今から170年ほど前、ここでは日本の近代化を象徴する重要な挑戦が行われていました。それが、鉄製大砲の鋳造です。

幕末の日本を守るために

韮山反射炉が造られたのは、今から170年以上前の江戸時代末期。1840年のアヘン戦争や、1853年のペリー来航をきっかけに、日本でも外国から国を守るための備えが必要だと考えられるようになりました。そこで、西洋の技術を取り入れた大砲づくりを進めたのが、韮山代官の江川太郎左衛門英龍(坦庵)です。英龍の提案によって1854年に築造が始まり、彼の死後、息子の英敏らに受け継がれて1857年に完成。ここで実際に鉄製大砲が鋳造されました。幕末の日本が近代化へと歩み始めた時代の姿を今に伝える貴重な産業遺産として、2015年には「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つに登録され、世界文化遺産となっています。

実際に訪れてみると、歴史的な背景とは対照的な穏やかな空気が流れています。 芝生が美しく整えられた庭。 周囲を包み込むような緑豊かな山々。 そして耳を澄ませば聞こえてくる川のせせらぎ。 そんなのどかな景色の中に、幕末の緊張を今に伝える反射炉が静かに佇んでいます。 私たちは愛犬ショコラと一緒だったため、入館はできず、外からその姿を眺めながら周辺の散策を楽しみます。 歴史を感じながら、愛犬の小休憩として歩くには、ちょうど良い立ち寄りスポットです。

反射炉を横目に庭を抜けて橋を渡ると、隣接する「反射炉物産館 蔵屋鳴沢 担庵」があります。

こちらでは、自社ブランドの日本茶やクラフトビール「反射路ビヤ」、静岡・伊豆の銘菓など、多彩な商品が販売されていて、お土産物を見ることができます。

反射炉のそばを流れる、古川

韮山反射炉の脇を静かに流れているのが、狩野川水系の一級河川「古川(ふるかわ)」です。現在は、川のせせらぎが心地よい穏やかな風景をつくっていますが、実はこの古川は、韮山反射炉とも深い関わりがあります。当時は、その水流を利用して水車を動かし、大砲の鋳造に必要な動力として使ったと伝えられています。幕末の人々が、この土地の自然の力を上手に取り入れながら、近代的な大砲づくりに挑んでいたと思うと、とても興味深いものです。現在も清らかな流れを保ち、天然の蛍が自生する場所としても知られる古川。歴史を伝える反射炉と、豊かな自然を育む川。その二つが寄り添うこの風景も、韮山反射炉を訪れた際にぜひ感じてほしい魅力の一つです。

普段なら「大きなレンガの煙突が残っている場所」として通り過ぎてしまうかもしれない韮山反射炉。けれど、その背景にある物語を知ってから訪れると、目の前にある景色が少し違って見えてくる気がします。

反射炉を見守る、江川英龍(坦庵)の像

ひときわ目を引くのが、凛々しく立つ江川太郎左衛門英龍(坦庵)の銅像です。まるで今もここで、長年の夢だった反射炉を見守っているかのような佇まい。韮山代官を務めた英龍は、西洋砲術や海防について積極的に学び、日本を守るための新しい技術を取り入れようとした人物でした。そんな英龍の建言から築造が始まったのが、この韮山反射炉です。残念ながら、英龍自身は1855年に反射炉の完成を見ることなく亡くなり、その志は息子の英敏へと受け継がれ、1857年に反射炉が完成しました。今では地元の人々から「たんなんさん」と親しみを込めて呼ばれているという英龍。反射炉を訪れた際には、ぜひこの銅像にも目を向けてみてください。大砲を造るための炉だけではなく、幕末の日本の未来を思い描いた一人の人物の姿が、そこには残されています。

砲弾が並ぶ、古川の橋

韮山反射炉から物産館へ向かう途中、古川に架かる小さな橋を渡ります。ふと欄干に目を向けると、そこにはずらりと並んだ、灰色の砲弾を模した飾りが。大砲を造るために築かれた韮山反射炉らしい、ちょっと遊び心のある意匠です。静かに流れる古川と、歴史を感じさせる砲弾の欄干。さりげなくこの土地の歴史がそっと息づく、そんな小さな見どころです。

高台から眺める富士山もおすすめ

この場所のもう一つのお楽しみが高台から望む富士山ビューです。隣接する反射炉物産館「蔵屋鳴沢 担庵」の脇から坂道を上って高台へ向かうと、天候に恵まれた日には富士山を望むことができます。

歴史を感じる反射炉と、伊豆らしい豊かな自然に囲まれ、その先には富士山の雄大さが楽しめます。一つの場所で、伊豆の「歴史」と「自然」の両方を楽しめるのも魅力的。

ショコラと一緒に散策しながら、幕末の日本に思いを馳せるひととき。

緑に囲まれ、古川のせせらぎが心地よく響く、とても静かな場所です。伊豆の国市を訪れる際には、ふらりと立ち寄り、幕末の歴史と穏やかな風景を楽しんでみてください。

韮山反射路(世界文化遺産)
住所:〒410-2113 静岡県伊豆の国市中268
TEL:055-949-3450
館覧時間:
3月~9月 午前9時から午後5時まで、10月~2月 午前9時から午後4時30分まで
休館日:毎月第3水曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月31日~1月1日)
観覧料:一般個人(高校生以上)500円 / 生徒・児童 50円
駐車場:有
愛犬同伴:館内不可(館外周辺はOK)
https://www.city.izunokuni.shizuoka.jp/bunka_bunkazai/manabi/bunkazai/hansyaro/

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