「味岡伸太郎の湯谷の家」新緑の木漏れ日の下、泥染茶室で開催する茶会

愛知県新城市湯谷温泉近郊の宇連川とJR飯田線に挟まれ、板敷川を見下ろす林の中にアーティスト味岡伸太郎の作品となる「泥染茶室」を設営し開催された「茶会」へ!

豊橋駅(愛知県)~辰野駅(長野県)まで195.7kmの間に94もの駅があり、平均駅間距離がわずか2.1kmのJR東日本飯田線。その飯田線の途中駅(中間駅)の1つである湯谷温泉駅を超えて、のどかな小路を飯田方面に5分ほど歩き、田ノ島踏切を過ぎて線路を渡ります。湯谷の家に出向くには、この線路を渡る以外道がありません。

線路を越えて見えてくる赤い屋根の小さな家。これがアーティスト味岡伸太郎氏の別邸「湯谷の家」となります。

敷地内に「泥染茶室」を設営し、準備に精を出す味岡さん。
茶会は食後に開催されるため、先ずは腹ごしらえと参りましょう!

この日の茶会での炊き出しは「野草の会」でもお馴染みのゲーテ高橋さんの野草料理と豊橋のワインカフェ「夏目」の夏目晴夫さんが担当されています。

夏目晴夫さんは豊橋のワインカフェ「夏目」の店主であり、料理人であり、そして日本ソムリエ協会認定シニアソムリエの肩書を持たれており、1日1組限定で完全予約制となるレストランを運営されています。

味岡さんと夏目さんは昔からのお付き合いがあり、夏目さんのレストラン自体も味岡さんと共に一から作り上げられています。

この日は3升炊きの大きな羽釜を用いて庭にあるレンガのコンロに薪をくべて御飯を炊き上げてくれます!
羽釜の蓋がなかったため、味岡さんが羽釜のサイズに合うように蓋を自作されたとのこと。
本当に何でも手づくりされる器用な方です!

およそ10年ほど前から味岡さん自らが手を加えリノベーションし続けている湯谷の家は、アートギャラリーさながらの雰囲気でインテリアに留まらず、建物全てがアート作品です!

設置される自身のアート作品は定期的に入れ替えられており、花器を選び季節毎の野山の花を飾り四季折々を演出。
こんな贅沢なことはありません。

壁紙一つにしてもすべて手作業で和紙の切り貼りと細やかな作業の中にあるバランス感覚。

俳人の星野昌彦さんの句「かごめかごめ子等くぐもりて即是空」を書かれた2008年の作品です。

こちらは栃木県大前神社の骨董市で味岡さんの目に留まり手に入れられた仏様。
僅かながらに金箔が残る古き時代のもので、光背は古い鍬に金粉を塗られており輝きを放っています。
仏様に合わせ台座は薪の中から選び抜いた木を黒塗し安置。

「花頌抄(はなしょうしょう)― 野の花を生ける ― 」
14ヶ月もの間、味岡さんが野に咲く花を摘み、生け、娘である宮田明里さんが撮り続け、俳人が句を詠んだものをまとめた図録となります。

頌は「愛でる」の意、抄は「その一部」。つまり花を愛でた1年の記録です。
身近な野草の多くを収録されており四季の野の花の図鑑でもあり、折々花の変化も楽しめる超大作です!

見渡す限り緑の森と山々に囲まれ、清流の涼しげなせせらぎが聞こえる長閑な土地。
囲炉裏に蓋をし、一枚板の座卓を張った和室は素足が心地良い。
開放的な縁側からの新緑の眩しさと小鳥たちの囀りが非日常的なひとときを感じさせてくれます。

宇連川のせせらぎが癒しのBGMとなり、豊かな時間が流れる湯谷の家。

野草の達人であるゲーテ高橋さんが野山の野草を摘み取り作ってくださる野草料理が登場!

こちらは飢饉のあった米沢藩が飢えを凌ぐために植えられた野草の一つで、米沢藩は食べられる植物の普及書として140数種の救荒植物を載せた書「かてもの」を熟読し、飢饉の窮地を凌いだとされています。山の自然の恵み・山菜を摂る食の文化があり、その文化は今も尚受け継がれており、私たちも野草に触れ合い食することが出来ています。

「野草の天婦羅」

摘みたて茶葉、淡竹、こごみ、セイタカワダチソウ、セリ、金魚草、薔薇の花などなど。
摘みたて茶葉の天婦羅は香りが良く、野や山の恵みを感じられる滋味深い味わい。

以前こちらで開催された「野草の会」に何度か参加させていただいたことを機に、本当に野草料理のファンになっております。

「田口塩鶏」

奥三河で親しまれている味付け鶏もも肉で焼くだけの手間要らずの一品。
塩麹で肉は柔らかくなっており、だしは貝柱だしを使い旨みを濃縮した旨塩味となっています!

「羽釜炊きおにぎり」

羽釜で炊き上げ、お焦げの香ばしさと風味豊かな白米で握ったおにぎりは具に梅干しを添え海苔を巻き、食べやすい小振りなサイズで可愛らしく丸く握られています。

「手摘み茶」

茶葉を手で摘み煎ってから豪快に鍋で煮出す手摘み茶。

この日は晴天とはいかなかったものの、20度前後の過ごしやすい気候で、さわさわと木々の揺れる葉音と風が心地良い縁側。

来客された皆様とのひとときをゆったりと楽しませていただきました。

週に1~2度は訪れ、草刈りを中心に草木の手入れや家の管理を施しにやってくる味岡さん。
数本の松の木が枯れてしまったようですが、代わりに新しい松の芽が顔を出し始めみるみるうちに成長しているようで地の力を感じます。

小さなお子様連れのご家族は川まで下りて、水遊び。
男の子の靴はビッショリと濡れてしまいましたが、これもまた初夏ならではの風情ある風景ではないでしょうか。

コロナ禍ということもいうこともあり、各々が三々五々に集う今回の茶会。

泥染茶室の前で茶室の順を待つ客人たち。

この泥染茶室は2017年に開催された「愛知県陶磁美術館」でのワークショップ「土の色発見・楽焼作りと茶会体験 土・色・茶の湯」の際に子供たちと一緒に作成された茶室です。

小学生の子供たちに茶葉の手摘みから体験させ、その茶葉を西尾で抹茶に仕上げてもらい、粘土で茶碗を作らせ、絵を描いて抹茶茶碗を作成し楽焼窯で茶碗を焼き、茶室の一部となる泥染め体験もさせ、自分たちの手で摘んだ抹茶と手作りの抹茶茶碗、そして、この泥染茶室でお茶会をするという壮大な催しで、制作期間はおよそ4ヵ月ほどを要したとのこと。

手作業の楽しさやものづくりの楽しさを子供たちに味わってもらうという素敵な催しで、味岡さんが当時の様子を大変ではあったがとても楽しかったと語ってくださいました!

私たちの番が回ってきたので、茶室にお邪魔致します。

亭主を務められる味岡さん。

そして今回お抹茶を点ててくださるのは豊橋を拠点に活動されている陶芸家の稲吉オサムさんです。

お茶菓子「どんぐり、ゴーヤ、小茄子、末成りイチジク、夏蜜柑のピール」
お茶菓子は陶芸家の稲吉オサムさんが用意なさってくださったもので、器と取り箸は味岡作。
先立て味岡さんが9時間半もの時間をかけて登山した春野町の山で手に入れたクロモジの枝を今回の取り箸に採用。
ウッディで透明感溢れる上品で爽やかな香りが楽しめ、高級爪楊枝の素材や精油にも使われるクロモジの香りに癒されていると、最後にお土産で持たせてくれました!(感謝)

野草料理を出し終え、お先にあがられるゲーテ高橋さんが茶室を覗き声をかけてくださったところをパチリ。
いつも美味しい野草料理をありがとうございます!

茶碗「稲吉オサム」
お抹茶がそれぞれに用意されて参りました。

茶碗「稲吉オサム」

今回の茶会に用いられた茶碗は、陶芸家でもある味岡伸太郎さんの作品と陶芸家の稲吉オサムさんの作品が並びます。

お点前頂戴致します。

茶会と聞くと非日常的で堅苦しいイメージを抱きがちですが、味岡さんが開催されている茶会は、ざっくばらんとした略式で行われることもあり、日本の文化や人の温かい心遣いに触れることができる素晴らしい機会だと思います。

味岡さん自身も「こうした茶会は定期的に開催していきたい」と話されており、ゆくゆくはこちらの湯谷の家に常設の茶室を設けられる予定で、宇連川を望む茶室づくりを検討中とのこと。

茶室にしつらえられたアート作品はもちろん味岡さんの作品です。

こちらは丸木を四分の一にカットしひっくり返した作品で「えんちゅうのしぶんのいちのしかくちゅう」という作品。
これらの作品のみの個展が、来月6月26日(土)~7月18日(日)まで「Hirano Art Gallery」にて開催される予定です!

陽に透かされた泥染茶室は土に染められた温かな色合いで、何ともいえないやわらかな風合いを醸し出しています。

新緑の木々に佇む泥染茶室。
以前、屋内展示で拝見したことがあったのですが、やはり自然界に近いものは自然界の中に存在することがしっくりくるように思えてしまいます。

丁度、JR飯田線を走る電車がやって参りました!
1時間に1本程度の路線ではありますが、一度この電車に乗ってのんびりと鈍行列車の旅をしてみたいものです!

本日の用を果たして身綺麗にしてもらった器たちの顔はどこか誇らしげにも伺えます。

枝を紐で括り付け骨組みされている泥染茶室の解体作業。
また日の目をみるまで暫しお別れです。

味岡さん、久しぶりの再会はとても嬉しく、楽しいひとときをありがとうございました!

また、次回も素敵な企画をお待ちしております。

泥染茶室の茶会
会場:田ノ島39番地
泥染茶室:味岡伸太郎
茶碗:味岡伸太郎/稲吉オサム
野草料理:ゲーテ高橋
飯炊き:ワインカフェ夏目 夏目晴夫
http://www.ajioka3.com/

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