今年2016年で4回目を迎えた「アジアのベストレストラン50」(サンペレグリノ&アクアパンナがスポンサー)は、
「世界のベストレストラン50」のアジア版で、
バンコクにて、その発表及び授賞式が執り行われました。
2015年度、2016年度のトップに選ばれたタイ・バンコクのインド人シェフ、
ガガン・アナンド(Gaggan Anand)氏が作られるフュージョン料理店「Gaggan ガガン」は、
インド料理を刷新することを目標に2010年にオープンされています。
ガガン・アナンド(Gaggan Anand)氏が作り出す料理は、
バルセロナ郊外の「エルブリ(スペイン語の発音でエルブジ)」での経験により、
エルブリ・シェフのフェラン・アドリアの影響を受けているようで、
モダンな調理テクニックを持ち合わせ、伝統的なインド料理に繊細なアレンジを加え、感性とエネルギー注ぎ込み、
インド料理にスペインのタパスの要素やフレンチ、イタリアン、タイ、日本を融合させ、
独創性に富んだフュージョン料理を提供されています。
インド人のガガン・アナンド(Gaggan Anand)氏は、カルカッタ出身です。
故郷インドでは、タージグループのレストランに勤務し、その頂点を極め、
かつてのインド大統領・アブドゥルカラームのシェフを務めていたという驚きの経歴を持ちます。
その後、タイに渡り、そしてスペインのエルブリでも修行し、後にまたバンコクへと戻り、
独自のインディアン・キュイジーヌの店をオープンさせ、今や、予約を取ることが難しいほどの人気店となっています。
今回は、事前にラグジュアリー・アーバン・リゾートホテル
「ザ・サイアム THE SIAM」のコンシェルジュに予約をお願いしてあります。
宿泊されるホテルからの予約が望ましいと思われます。
白を基調としたコロニアル様式の洋館。
手入れの行き届いたテラスからは、緑に恵まれた庭園を望めるようになっています。
まず、お出迎えのスタッフの多さに驚きますが、
スタッフが揃って、明るく笑顔で出迎えてくれ、それぞれがゲストとの距離を縮めようと、
コミュニケーションを取ってくれるため、気持ちの良い歓迎の仕方です♪
店内にも白を基調とし、コロニアル様式に相応しいシンプルなインテリアを揃えています。
天窓から自然光が差し込む明るい階段のぼり、2階席へと案内されます。
来店時の店内は、まばらに空席が見られていましたが、
食事中続々と予約ゲストで席は埋まり、結果的に2回転までしておりました!
今回は浴衣で器と一緒に旅をする企画ということで、店舗側に許可を得て浴衣を着ておりますが
一般的に日本国内のレストランで浴衣がNGのところが多いので
浴衣はお祭りや花火大会などで着用されることをオススメします。
コースメニューは2コース用意されており、
15種ほどのショートコースと小皿で23種ほどのロングコースと分かれています。
2500THB++ 、または4000THB++。
(日本円にしておよそ9,250円、または14,800円)
Gagganでは、「お料理は素敵な思い出とともに残るもの」と言うのをポリシーにし、
料理もそれぞれの場面を演じるような構成となっており、
まるで異国を旅をするような1つの物語として構成されています。
ストーリーをより深く堪能するためにも、今回は、23種類のロングコースを選んでいます。
「Sanpellegrino(L)」220THB(日本円しておよそ820円)
赤い星と「S.Pellegrino」のロゴが特徴のイタリアのミネラルウォーター。
水質は硬水で炭酸を含み、きめ細やかな炭酸とマイルドな喉越し。
アジアのベストレストラン50のスポンサーでもあるためか、
きっちりと宣伝され、こちらをお勧めされました。
忙しかったようで開栓までにかなり時間がかかってしまいましたが
ウェイターにお勧めされた乾杯のスパークリングワインを注いでいただきます。
Gagganのウェイターが来ている黒いユニフォームは
日本の学生服をイメージしているとスタッフが言っていました(笑)
「Col D’orato brut rose」イタリア 2,250THB(8,330円)
きめ細やかな泡立ちで鮮やかなロゼのスッキリとした辛口。
「Rose – Shikanji(Indian Lemonade)」
インディアン・レモネードをアレンジし、バジルシードとディルを用いて、
ローズの香りを纏わせ試験管に注いだ見た目にはとても美しいジュレ。
「Please,one shot!」
「一口で飲んでください!」とウェイターに声掛けされた一品ですが、
これがまた振っても叩いても出てこない固めの仕上がりで、
思いっ切り肺活量を要した上で、ようやく口に含むことができました。
味わいは、爽やかでエレガントな中に、スパイスをミックスしており、割と複雑。
隣のインド人のマダムが何度も何度も振り、叩き、吸い込んでいましたが、
なかなか飲めずにいたため、互いに思わず笑ってしまっていたほど(笑)
単に配合のミス!?とは思えないので、
深読みをするのであれば、もしかしたら、「一気に飲んで!」と言っておいて、
飲めないのを知りながら、笑わせて、印象に残すという演出なのでしょうか!?!?
謎が深まるコースのスタートです。
「Yogurt Explosion」
直訳すると「ヨーグルトの爆発」と名付けられたこちらの一品は、
銀の匙に乗った白いプルンプルンと揺れるものを一口でいただきます。
膜の厚みが口に残る印象で、イマイチ口溶け力に欠けます。
このような料理は他のレストランでも食べたことがありますが、
それらは膜が非常に薄く、弾ける度合いがこちらより数倍感じられ、まさに爆発!と言ったような衝撃を受け、
滑らかな仕上がりだったように記憶しています。
こちらは、口中で上顎と舌の力でようやくパチンと弾けさす感じ。
中から溢れるヨーグルトは爽やかで美味しかったです。
「Edible plastic Spiced nuts」
乾燥剤!?はたまたオブラートに包んだ胃薬!?のような小袋を一口でいただきます。
袋はオブラートで出来ており、中身はワサビフレイバーの粉末状にしたとナッツ。
複雑な和テイストの味わいが口中に広がりますが、
幼少期からオブラートが大の苦手で、口中でペタッと張り付くのが嫌だった記憶を思い出させました。
「Chocolate Pani puri」
一口サイズの小さな球体のホワイトチョコの中にスパイシーなソースを入れ銀箔でふたをしたもの。
インドのスナック「パニプリ」を分子料理的にアレンジしています。
チョコレートの甘味と酸味とスパイシーさがまた複雑な味わいを生み出しています。
「Papadam and tomat chutney」
インドのスナック「パパダム」をアレンジして、分子料理として再構築した一品。
ライスクラッカーの上にスパイスを添えて、トマトのチャツネが乗っています。
カリカリ、サクサクとした食感はまさにカレー煎餅のようなスナック!
「Potato 2-some-crispy and liquid」
揚げた鳥の巣に見立てたポテトの上に、ピューレ状のソースを添えて。
カリカリッ、サクサクッ、そしてプチッと弾け、トロ~っとした食感を楽しむ一品。
やはりスナックのような軽い食感。
「Bengali mustard and noori pakoda」
マスタードと青海苔の組み合わせ。
うーん・・・日本人は、海外で食べる和テイストには厳しいですよね、本当。
ガガン・アナンド(Gaggan Anand)氏が日本滞在中に受けた日本食のインスピレーションを料理にコラボさせているようです。
「Dhokla」
インドの伝統菓子でもある
米とひよこ豆の粉で作った生地を発酵させて蒸したドクラスポンジの上に、
インド料理定番のミントソースを泡状にしたものを乗せ、揚げたカレーリーフを添えたもの。
ミントソースの辛さとスポンジの甘みの合わせ技。
合う、合わないで言ったら合わないような気がしますが、
相反するものの組み合わせのユニークな発想は、時として奇跡を生み出すので、
生みの苦しみはこれからも続くのでしょう。
「Keema (Lamb) Samosa」
キーマカレーを中に忍ばせた揚げ物。
春巻きをインド風にアレンジしたような料理です。
上には、ペパーミントパウダーがかかっています。
生地が厚く、ザクザクとした固めの食感で中から、マイルドな辛さのキーマカレーが出てきます。
ペパーミントのアクセントは、馴染みにくい。
「Brain Damage」
直訳で「脳損傷」と題された一品は、
コリアンダーソースで味付けされたヤギの脳みそをペースト状にしてマカロンで挟んだもの。
インドでは、ヤギの脳みそはフォアグラのようなものだそうです。
マカロンは玉ねぎで作られています。
マカロンには赤唐辛子をベースにブレンドされたガンパウダーが振りかけられています。
脳を刺激するには十分です(笑)
ガガン・アナンド(Gaggan Anand)氏は、
イギリスのロックバンド「ピンク・フロイド」が好きで、彼らの曲にもこの「Brain Damage」があります。
1階には、シェフズライブキッチンとまではいきませんが、
ガラス越しに厨房内の臨場感溢れる雰囲気を見渡せる席が大変人気です。
ガガン・アナンド(Gaggan Anand)氏は、シンガポールに行かれており不在とのこと。(ガガーン:笑)
「Crab & Flowers」
大きな石に盛り付けられたのは、蟹の爪を軽い衣で揚げたものにスパイソースを添えた一品。
蟹身がふっくらとしており、スパイスソースが良く合います。
「Fukuoka Surprise」
ホワイトアスパラガスのムースとメロンリキッド、イクラと海苔を添えた福岡サプライズ!
こちらもガガン・アナンド(Gaggan Anand)氏が日本に来た際、
福岡に立ち寄った時の料理から受けたインスピレーションを形にしたもので、寿司に見立てた一品のよう。
ある意味、サプライズ!の仕上がりでした。
「Magic Mushroom」
森林をイメージした料理で土壌や木片などを表現。
幻覚作用が生じるマジックマッシュルームの名を用いた一品は、
トリュフときのこをたっぷりと使用したペーストです。
マジックマッシュルームは、
チェンマイからの新鮮な野生の葉とキノコ、トリュフ、およびアミガサタケで作られています。
割と器のチープさが目に付きますが、遊び心の表れでしょうか?
「Charcoal」
炭色した不思議な物体がガラス蓋の中に忍ばされており、
燻製用のスモークガラスのため、開封前のワクワク感があります。
スモークガラスを開けると、フワッと炭の香り。
サクサクとした衣をナイフで切ると、
中にはペーストが仕込まれており、ねっとりとした食感。
シーバスとマッシュポテトをコリアンダーで味付けした餡を、竹炭を練り込んだ生地で包んであります。
こちらは東京の「ナリサワ NARISAWA」で出されていた料理を参考に作られたそうです。
隣のテーブルに女性が1人で食事をされており、挨拶すると声をかけられました。
英語で「着物を着ているけど、今日、2人は何かの記念日なの?」と。
「浴衣は普段着のようなラフなものよ♪」と伝えると、
そこから話は、お互いに何故バンコクに居るのかと自己紹介を兼ねながら話が弾み、
彼女の住まう香港の話へと移り、香港の美味しい食べネタでとても盛り上がりました。
彼女の名前は、Evelyn Gao(通称:イヴ)、1人でこのような場所に食事に来れる勇気が素晴らしいです。
わたしなら、バー、もしくは居酒屋止まりでしょう(笑)
「香港に来たら、美味しいお店を紹介するわね♪」と約束してくれたイヴ。
必ず、可愛いあなたに会いに行きますね♪
「Chennai Kings」
ローストしたミックススパイス「マサラ」を使ったホタテ料理。
すべての料理にインドのスパイスを使用しているため、テイストが単調になりがち。
「Pig & Pickle」
72時間真空調理し、ほろほろと、とろける食感に仕上げたイベリコ豚を
ビンダルーカレー(ビネガーを使った酸っぱ辛いカレー)のソースでいただく一品。
イベリコ豚の下にマッシュポテトを添えて。
ゴアの郷土料理であるポークビンダルーを再構築した料理。
「Daab Chingri」
ココナッツの殻で海老を調理した組み合わせ。
ココナッツミルクにコリアンダーを効かせたエスプーマに銀箔を添えて。
西ベンガル州の州都であるコルカタで育ったガガン・アナンド(Gaggan Anand)氏は、
西ベンガル州で最も伝統的な料理の1つでもある海老のココナッツカレーを食べて育っており、それを再構築した料理。
ココナッツミルクのマイルドな味わいが広がります。
「Who killed the Goat? (Grilled Lamb Chop)」
血がほとばしる具合を器に表現し、「誰が山羊を殺したんだ!?」と名付けデザイン。
真空調理法の技術を用いて調理したラムチョップに、
アーモンドサフランオイルとビートルートのピューレを添えています。
ラムチョップの火入れはbetter。
ホラー映画が苦手なわたしには、衝撃的なタイトルと演出です。
わたし達は、日本から富山の友人で陶芸作家である「釋永岳 Gaku Shakunaga」くんの器を持参していたため、
彼の作品である「漆黒シリーズ」と「年輪シリーズ」を紹介すると、
「シンガポールに行っているガガン・アナンド(Gaggan Anand)に写メします!」
と携帯で撮影してくださいました!(感謝)
「I want my curry!!」
メーンディッシュの後に、オーソドックスにインドカレーが出てきます。
ナン or ライス、鶏肉 or ラム or 魚の選択肢があり、
わたし達は、ナンとライス、チキンと魚をそれぞれセレクトしています。
チキンは、チキンティッカマサラ。
魚は、その日の仕入れにより異なるそうですが、インディアンフィッシュカレーです。
どちらもマイルドな味わいの極々普通のインドカレーです。
「Gajar Halwa」
ドライアイスで美しく涼しげな演出のデザート。
黒ニンジンアイスクリームは、カリカリニンジンの花とカルダモンオイルで提供しています。
こちらもワンショットでいただきます。
「In Season」
タイのマンゴーMahachanokのペーストにココナッツミルクの半球状を被せています。
タイの定番のお菓子であるカオニャオ・マムアンをイメージ。
ココナッツミルクのドームを割って、シャリシャリ食感と共にアイスを楽しみます。
「Magnum」
イギリス生まれの贅沢なアイスバーMagnum Ice Creamを、
子供心をくすぐるようにポップキャンディーに見立ててアレンジしたもの。
「Candies」
食後のキャンディーたち。
上には、バラの香りを纏わせたゼリー、中には、柚子、タマリンド、マシュマロです。
ハーブやスパイスが織り交ぜられたグミのようなゼリーは、
口内清涼剤のような味わいで、歯を磨いている気分になります。
「Double Espresso」150THB(日本円にしておよそ560円)
コースに食後のドリンクが含まれていませんので、追加料金でエスプレッソをダブルでオーダー。
最後にスタッフのMs.Meenakshi Kumarさん達と記念撮影させていただきホテルに戻りました。
Gagganは「アジアのベストレストラン50」だけではなく、「世界のベストレストラン50」にもノミネートしています。
「世界のベストレストラン50」は、世界26エリアのチェアマンを含む評議員36人の投票により選出され、
昨年までの「アジアのベストレストラン50」は、そのランキングの中からアジア勢だけを抽出してランキングしたものでした。
影響力の多い欧米の評議員は、アジアを訪れる頻度が少ないことから、アジアのレストランが反映されずらいという理由で、
今回からアジア人だけの評議員でアジアのベストレストランを投票する形になったそうです。
そのため、「世界のベストレストラン50」でのランキングと、「アジアのベストレストラン50」のランキングでは
順位が入れ替わっているレストランもあります。
ベストレストランは、ミシュランの評価とは方向性の異なるランキングなのですが、
このランキングは「味が美味しいか」ということを評価されているわけでなく
レストランに足を運んだときに、「今までにない体験がどれだけできたか」、または「感動できたか」を表した基準だと
NARISAWAの成澤由浩氏が受賞インタビューでコメントされているように、
近年、美食家は味だけでなくて、今までにない演出、エンターテイメント性を求めいているため、
レストランは料理だけでなくその空間をどのように演出するかが重要となってきています。
五感である視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を刺激するだけではなく、
人間が潜在的に持っている第六感にも響くようなレストランの在り方とは何なのか?
世界で活躍するトップシェフは日々模索しています。
Gagganは、インド料理を今までにない表現の仕方で再構築して提供していることに対して
大きな評価が集まっているのではないかと思います。
今回、わたし達がGagganでいただいた料理の正直な感想はというと、
食材の組み合わせや演出に面白さや新しい発見はあったものの、
味のバランスが整っていないものや、火が入りすぎているものなど、料理自体に粗さを感じ、
残念ながら、ストレートに「料理の美味しさ」というものを感じることが出来ませんでした。
ガガン・アナンド(Gaggan Anand)氏が不在であったというのも多少影響しているのかもしれません。
また、「アジアのベストレストラン50」のトップという評価から、大きな期待値を持ち過ぎてしまったのかもしれません。
日本人であるがゆえに感じる出汁の文化によるベースの旨味、繊細な味わいや技術、
そしてサービスを求めるとするならば、
やはり、わたし達は日本人シェフの努力を今以上に強く評価したいと思う気持ちが残るディナーとなりました。
今後もアジアに限らず、世界各国で美味しいとされる料理を探求し続けていきたいと思います。
ガガン Gaggan
68/1 Soi Langsuan Ploenchit Road Lumpini,Bangkok 10330, Thailand ⇒Google Map
TEL:+662 652 1700
(※要予約:宿泊ホテルコンシェルジュからの予約が望ましい)
http://eatatgaggan.com/