小島に浮かぶ修道院の迫力、世界遺産「モンサンミッシェル」

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フランス西海岸のサン・マロ湾岸に突き出た高さ約80m、そして直径約200mほどの円錐形の小島の上にそびえ立つ修道院モン・サン・ミッシェル。古代ケルト民族の聖地であり、島に鎮座する巨大な建物とその歴史的価値から1979年世界遺産にも登録された。モンサンミッシェルは日本語に訳すと「聖ミカエルの山」という意味である。島の頂上に立つ大聖堂の尖塔最上部には、1897年に彫刻家エマニュエル・フレミエによって製作(1987年に修復)された、黄金色に輝く大天使ミカエルの姿がそこにある。

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8世紀の初め、ノルマンディの大司教オベールの夢に現れ、悪魔の象徴である竜と戦いそれに打ち勝つ天使の軍団長大天使ミカエルが告げた「この岩山に我を祭る聖堂を建てよ!」に従い、アヴランシュ(モン・サン・ミッシェルの北東約13kmの隣町)のこの島にミカエルを奉る聖堂を建てたのが始まりとされる。聖堂ができて間もなく、モンサンミッシェルは大規模なキリスト教の巡礼地となり、10世紀にはベテディクト会の修道僧が居を構えるようになる。

西暦1000年以前には前ロマネスク様式の教会が建てられ、さらに1010年には地下納骨堂の上を覆うように岩山の頂上にロマネスク様式の大聖堂が建てられ、北壁に貼りつくように最初の修道院が建てられた。その後も修道院の拡張、ゴシック様式部分の増築、14世紀のイギリス・フランス間で起きた百年戦争のための要塞化工事、ロマネスク様式の内陣のゴシック・フランボワイアン様式への変更(聖堂内部の記事参照)など幾多の増改築が繰り返され、内部は迷路のようになっている。18世紀末のフランス革命で修道院が廃止されると1863年まで国の監獄として使用され、その間に荒廃が進んでしまった。1865年、再び修道院として復活、1874年にフランス政府の歴史記念物局の管理下に置かれ、現在に至るまで修復工事が続けられている。

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海の中に浮かんでいるためか、かつては島へ渡ろうとする巡礼者の遭難が跡を絶たず「モン・サン・ミシェルに行くなら遺書を置いて行け」という言い伝えがある。現在は、1879年に造られた堤防によって結ばれ、潮の満ち引きに関係なく訪れることができ、安全に渡れるようになっている。しかし、近年はその堤防のせいで砂が沈殿、堆積し、ぐるりと海水で囲まれることは稀となってしまい、海が「馬が駆けてくるような」速度でモンサンミッシェルまで押し寄せる光景はなかなか見られなくなってしまったのである。

また、橋の出没により様々な問題が発生し、海水の流れをより自然に戻そうということで、2005年より、障害となる砂と堤防に沿ってできた駐車場を整理し、目下大掛かりな環境整備工事を進めている最中だ。そのために修道院までのアプローチの全景を遠巻きに写真におさめるには少し現実的な世界に見えてしまうことが非常に残念だが、この工事の必要性は否めないであろう。最も、島内の観光には何ら支障がなく、2015年に完成を予定している。

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小島の上に忽然と現れる様を一望した時の印象は「あ、天空の城ラピュタだ!」と思う方も少なくはないはずだ。スタジオジブリの「天空の城ラピュタ」のモデルとも噂され、美しく幻想的なモン・サン・ミッシェルには、大天使ミカエル好きな人たちも多く訪れる。現地のツアーガイドによると、モンサンミッシェルの観光のシェアは日本人が断トツでトップだそうだ。店の先々で対応してくれる店員がカタコトではあるが、日本語で話しかけてくるというのも納得できる。有名な塩キャラメルの店では「塩キャラメル、コレ、カタイ、コッチ、ヤラカイ(やわらかい)、土産ニドウゾ」と、見事な接客ぶりであった。

フランスの聖地・パワースポットとしてとても有名で、石造りで何層階にもなっており、島の岩の上に建てられているモンサンミッシェルの内部の部屋の一室には、島の岩がむき出しになっている所があり、パワーストーンスポットとして知られている。我々にも現地のツアーガイドが「君たちに幸あれ!」と触れることを勧めてくれた。一見、見た目は何の変哲もない岩肌であるが、心を研ぎ澄まし、無心の状態で力を感じるか感じないかはあなた次第であろう。

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訪れた時は小雨が振り注ぐ状態で、にわか観光に支障をきたしたが、のんびりとカフェで珈琲を口にし休息をし終える頃には、大天使ミカエルのお力ゆえか、大雲の中ではあるが晴れ間を覗かせてくれた。ツアーガイドを伴えば、干潮時に湾内の砂浜を歩行することも可能。また、乗馬クラブから川沿いにはじまりモンサンミッシェルへと向かい、草や砂浜の上を馬にまたがり渡る人々の姿も見れる。これは乗馬経験の初級者も上級者もが楽しめるオプショナルである。凛と澄んだ空気と名物でもある羊たちののどかに戯れる様子を背景におさめれたことに我々は感謝せずにはいられない。

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